研究実績の概要 |
C型肝炎ウイルス (HCV) 持続感染による慢性肝炎・肝硬変では、抗ウイルス治療によりウイルス学的著効 (sustained virological response: SVR) が得られHCV排除に成功すると、肝細胞癌の発生リスクが減少する。近年、新規で直接作用型抗ウイルス剤が開発され、多くのHCV感染者がSVRを得られるようになっている。しかし、C 型肝炎 SVR後においても、種々の確率で肝発癌のリスクが残存することがわかっており、SVR後の発癌高リスク群の絞り込みが大きな課題となっている。本研究では、C型肝炎でSVR後に肝発癌を認めた症例について、(1) 肝星細胞の形質変化はSVR後に改善するか、(2) 潜在性B型肝炎ウイルス (HBV) 感染の有無、を解明することで、C型肝炎 SVR後の発癌リスク予測へ応用するための研究基盤の確立を目的とする。 研究計画では、平成28年度までに対象としてC型肝炎 SVR後に肝細胞癌で外科的肝切除された症例 30例の集積を目指したが、それ以上の53例の対象症例を集積することができた。対象症例に対し、(1)免疫組織化学を用いて肝星細胞の形質について検討を行い、現在までに、SVR後の肝線維化の残存に類洞壁細胞におけるCD34およびαSMAの発現が寄与している可能性があること、C型肝炎SVR後も非腫瘍部肝組織に線維化が残存する症例は発癌のリスクがあることを見いだし、国際学会で報告し、その結果は高く評価された(Single Topic Conference of APASL, Young Investigator award受賞)。また、(2)Taqman法PCRによる血中HBV DNAの解析、血中HBc抗体の検索、肝組織における免疫組織化学を行い、潜在性HBV感染の検索を行っている。現在までに、6例の潜在性HBV感染症例がみられている。
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