研究課題
大腸癌の前駆病変である鋸歯状病変から大腸癌への進展経路の探索のために、鋸歯状病変の組織学的解析を行っていたところ、既知の管状腺腫や鋸歯状病変(過形成性ポリープ、Sessile serrated adenoma/polyp、鋸歯状腺腫)に分類困難な特異な一群を発見した。これらをSuperficially serrated adenoma (SuSA)と名付け、蒐集した20例について臨床病理学的および分子生物学的解析を行った。SuSAの大部分は、内視鏡的に小型の無茎性病変として捉えられ、S状結腸または直腸に存在していた。組織学的には、SuSAは、主に直線状の腺腫様腺管から構成されるが表層に限局して鋸歯状の構造が見られるという特徴を示した。免疫組織化学染色では、表層においてCK20の発現が認められ、増殖能の指標となるKi-67陽性像は腺管底部~中層に認められた。WNT経路活性化の代替マーカーであるβカテニンの核集積像は全例で認められた。また、SuSAは、高頻度でKRAS変異(19/20例)およびRSPO融合/過剰発現(18/20例)という遺伝子異常を有していた。このことから、SuSAは分子生物学的にほぼ均質な一群であり、形態的・分子生物学的に管状腺腫や鋸歯状病変とは異なる独立した病変であると考えられた。さらに、以前の研究で解析した鋸歯状腺腫の組織学的解析を再度行ったところ、129例中15例(12%)にSuSA成分が認められ、そのうち14例はKRAS変異およびRSPO融合/過剰発現を有していた。このことからSuSAは組織発生の点で鋸歯状腺腫に関連していると考えられた。
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Modern Pathology
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The American Journal of Surgical Pathology
巻: 41 ページ: 1188-1197
10.1097/PAS.0000000000000877