研究課題
心疾患は高齢者疾患の上位に挙げられ、日本人の死因別死亡原因第2位とされている。心機能は加齢に伴い低下し、様々な要因に起因するため、心疾患の認識は遅れ重症化することが多い。高齢者における治療法は限られるため、心臓の機能低下における状態の把握と原因の解明が必須である。本研究では、生体内機能に深く関わる糖鎖に着目し、心臓における糖鎖および様々な細胞発現分子の老化に伴う質的変化を調べることを目的とした。当該年度は、これまでに得られた雌雄マウスにおける組織変化を継時的に比較し、加齢に伴う分子変化を検証した。糖鎖プロファイルの解析から推測されたメスの毛細血管の継時的変化では、心臓の組織断面をレクチンで染色することにより領域で異なる速度で減少していることを明らかとした。また、心筋細胞の大きさは雌雄ともに特徴的な変化を示し、その変化の時期がわずかに異なることを示した。正常なマウスにおける加齢では、組織変化に加え心臓の線維化が徐々に増加するが、増加の仕方は雌雄で異なることが明らかとなった。これらは、ヒトの心疾患において性差が存在することを示唆する結果である。さらに、心筋梗塞モデルマウスを用いた糖鎖解析では、梗塞領域において正常マウスとは異なるいくつかの糖鎖の増加が示唆された。以上の結果から、正常マウスの心臓において、雌雄どちらも加齢に伴い糖鎖に示される分子変化に加え、組織変化が領域ごとに生じること、そしてその変化の時期にはわずかに違いが存在することが示唆された。このような変化は領域特異的に生じる疾患と何らかの関係性が存在すると予想される。今後は、より詳細な分子変化と各心疾患との関連性を明確にし、高齢者における疾患予防への発展を目指す。
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