TMEPAIはがん細胞において発現が亢進し、TMEPAIをノックダウンすると移植腫瘍形成能や足場非依存的増殖能が低下することから、腫瘍形成に関与するタンパク質であると考えられている。TMEPAIはアンドロゲンやTGF-b、EGF、Wntによって転写が制御されることが報告されており、一方でTMEPAIはTGF-bやアンドロゲンシグナルを負に制御分することやPTENの分解を促進することでPI3K/AKTシグナルを増強することも知られている。本研究では、TMEPAIの腫瘍形成における分子メカニズムとTMEPAIの生体内での機能について検討を行った。 その結果、我々はTMEPAIの新たな機能を見出した。TMEPAIを過剰発現すると、Wntシグナル依存的なTOP-flashレポーター活性が有意に抑制され、Wntシグナルの標的遺伝子であるAxin2やc-mycの発現が減少した。一方、TMEPAIの過剰発現する乳がん細胞からCrispr/Cas9システムを用いてTMEPAI K.O.細胞を樹立したところ、Wntシグナルの増強や、Wntシグナル依存的なb-cateninの蓄積、核移行が増強された。よって、TMEPAIはWntシグナルを抑制する分子であると考えられる。(現在、論文投稿準備中) さらに生体内におけるTMEPAIの機能を解析するため、TMEPAIおよびTMEPAIのファミリー分子であるC18orf1 (LDLRAD4)のノックアウトマウスおよびダブルノックアウトマウスを作製したが、現在までに通常飼育下では、目立った表現型は認められていない。 今後、TMEPAIがどのシグナルを介して、どのように腫瘍形成に関与しているか、さらにin vivoにおけるTMEPAIと腫瘍形成の関連を明らかにし、TMEPAI高発現がん細胞の治療や診断法の開発へと繋げていきたい。
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