本研究では、IL-17産生型gdT細胞の分化を制御する動作原理の理解を目指し、gdTCR下流で機能するチロシンキナーゼであるZap70とSykの役割について解析を 行った。これまでの研究成果から、Syk欠損マウスの胸腺ではIL-17産生型gdT細胞が全く検出されないことから、IL-17産生型gdT細胞の分化にはSykが重要な役割を果たしていることが明らかにされた。しかし、Syk欠損マウスは新生仔致死であるため、末梢gdT細胞におけるSykの役割については解析が及んでいない。そこで、最終年度では、リンパ球系列特異的Syk欠損マウス(Syk cKO)を作成し、末梢gdT細胞のサイトカイン産生能などについて解析を行った。Syk cKOマウスの胸腺では、gdT細胞の細胞数がわずかに減少していた。PMAとイオノマイシン刺激によってサイトカイン産生能を解析したところ、これまでの結果と一致して、IL-17産生型gdT細胞はほとんど検出されなかった。一方、IFNg産生型gdT細胞の絶対数に変化は認められなかった。また、抗体によってTCR刺激を誘導した結果、Sykの欠損によってERKやAKTのリン酸化の減弱が観察された。 次に、末梢組織におけるgdT細胞について解析を行った。脾臓および肺ではIL-17産生型gdT細胞数が顕著に減少し、IFNg産生型gdT細胞数に大きな変化は認められなかった。また、皮膚に局在するVg5Vd1陽性gdT細胞も野生型と同等に検出された。腸管上皮に局在するVg7陽性gdT細胞もまた大きな変化は認められなかった。 Syk cKOマウスの樹立により、Syk欠損時における末梢gdT細胞を解析することが可能になり、今後疾患との関わりについて検証することが可能となった。
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