ユビキチンリガーゼLUBACは、TNFRSF下流のNF-kappaB経路の活性化及びTNFR1下流での細胞死抑制能を持つ。全身でLUBAC機能が低下したマウスcpdmは、細胞死及び自然免疫反応の亢進を伴う自己炎症性皮膚炎を発症する。平成28年度、研究代表者はcpdmの原因遺伝子Sharpin(LUBAC構成因子の一つ)をT細胞系列で欠損させた場合、(自己免疫様の免疫活性化状態を示すにも関わらず、)cpdmと同様のミエロイド系免疫細胞主体の自己炎症様皮膚炎を発症することを明らかにしている。本年度(最終年度)は、このT細胞依存的な自己炎症誘起メカニズムの詳細を明らかにすることを目的に研究を進めた。 制御性T細胞内のLUBAC構成因子Sharpin及びHOIPを標的とし、段階的な重症度を有する、数系統の異なる自己免疫疾患モデルマウスを作製した。最も症状が緩和なマウスの皮膚では、自己炎症様の病理像が顕れてくること、新規に作成した自己炎症性皮膚炎を発症するマウスとの掛け合わせの結果、この皮膚炎の増悪化を誘導することを見出した。実際に、自己免疫疾患モデルマウスの皮膚組織の染色実験で、アポトーシスやネクロプトーシスを含むプログラム細胞死が亢進していることを証明しており、自己免疫状態が、皮膚細胞の細胞死を介して自己炎症を誘導することが示唆された。申請者は表皮及び真皮からリンパ球及び表皮細胞等を単離する手法を確立し、皮膚内T細胞のほとんどがCD103+CD69+のいわゆる組織局在性サブセットであることや、ネクロプトーシスを誘導可能なTNFSFのうち、膜結合型TNFの発現上昇が優位であることなど、皮膚内病原性T細胞の表現型を解明した。TNFやネクロプトーシス実行因子Ripk3の欠損マウスを用いると自己免疫マウスの皮膚症状が軽減された。T細胞による新たな炎症誘発メカニズムを提唱することが出来た。
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