研究課題
がんの難治性の原因の一つとして、がん細胞の多様性が考えられているが、大腸がん発生初期における多様性は明らかでなく、前がん病変からがんへの変化を考察し、悪性化を引き起こす真の遺伝子や多様性を生み出す最初の契機を明らかにするため本研究を開始した。①症例集積 (10症例): 大腸側方発育型腫瘍 (2cm以上、腺腫または粘膜下層にとどまる腺がん、脈管浸潤なし、遠隔転移なし)から1症例あたり4-7領域の腫瘍組織と1か所の正常粘膜を採取し、それぞれのサンプルからDNAを抽出した。腫瘍組織に関しては、凍結切片を薄切し、マイクロダイセクションにより、腺腫成分と腺癌成分を分離した。②全エキソームシーケンス: 次世代シークエンサーを使用し腫瘍組織53サンプルと対応する正常組織10サンプルに対して全エキソームシーケンスを実施した。③ターゲットメチル化シーケンス: 10症例中4症例をターゲットメチル化シーケンスを実施した。④解析: 全エキソームシーケンスの結果から、遺伝子変異情報 (一塩基置換、挿入、欠損など)を獲得し、大腸がん発生早期にも多様性があることが分かった。それを基に系統樹を作成し、大腸がん発生早期の進化の過程を推測した。また、コピー数変化も推測した。メチル化シーケンスは2症例について実施終了しており、結果が集まり次第解析を開始する。
2: おおむね順調に進展している
エキソームシーケンスは解析にたる質で終了し、現在解析の段階である。メチル化シーケンスは実施症例すべての結果が集まり次第、解析を行うこととしている。以上より、おおむね順調に進展していると判断した。
今後は大腸早期がん・大腸腺腫のエキソームシーケンスの結果から得た腫瘍内不均一性や系統樹、コピー数変化の情報と、これまでに当研究室で行った進行大腸がんの遺伝子変異情報を統合的に評価し、大腸がん発生に重要な遺伝子変異や進化の過程を同定する。また、メチル化シーケンスの解析に着手し、エピゲノム変化の発がんへの関わりも検討する予定である。
次年度、実験に使う為。
次年度、実験消耗品に使用予定。
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PLoS One.
巻: 11(11) ページ: e0165912.
10.1371/journal.pone.0165912.