研究課題
がんの難治性の原因の一つとして、がん細胞の多様性が考えられているが、大腸がん発生初期における多様性は明らかでない。前がん病変と早期がんを考察し、悪性化を引き起こす遺伝子変異や多様性を生み出す最初の契機を明らかにするため本研究を開始した。大腸腺腫と早期大腸がん (併せて大腸がん早期病変) 10症例において、一腫瘍に対して複数か所の全エキソームシーケンス解析を行った。これまでに報告した進行病変と比較すると、大腸がん早期病変には同程度に遺伝子変異が存在し、腫瘍内不均一性は早期病変でやや強い傾向にあった。進行大腸がんでは多様性を形成する遺伝子変異のほとんどはパッセンジャー変異で、中立進化によって腫瘍内不均一性が獲得されると考えられるのに対して、早期病変ではAPCやKRASなどのドライバー変異によっても腫瘍内不均一性が形成される枝分かれ進化であり、腫瘍内不均一性の形成には自然選択が強く関わっていることが分かった。また、全エキソームシーケンスの結果からコピー数変化を推測すると、腫瘍が進行するごとにコピー数変異は増加することが分かった。これにより、腫瘍形成初期においては血流が乏しく栄養や酸素の供給が乏しい過酷な環境や免疫排除、空間的制限をかいくぐって成長するために、より生存に有利な変異を獲得した腫瘍細胞が生き残り、浸潤してしまった進行がんに至っては、生存に必要な変異を獲得しているためにパッセンジャー変異を獲得した細胞がそれぞれ生き延びていけると考えられた。
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