SAGE法による遺伝子発現解析から、アレルギー性炎症の病態形成に重要な役割を担うグループ2 自然リンパ球(ILC2)に短鎖脂肪酸受容体(GPR43)が発現していることを見出した。短鎖脂肪酸による炎症誘導時におけるILC2のIL-5産生制御機構について、申請者らのグループが開発したIL-5産生細胞を蛍光タンパク質VenusでモニターできるIL-5/Venusマウスを用いたin vivoでの解析を行った結果、短鎖脂肪酸がILC2の活性化制御に関わる可能性は少ないことが考えられた。また、ILC2の活性化制御に関する検討において、免疫抑制剤のシクロスポリン(CsA)により喘息モデルマウスの肺由来ILC2のIL-5産生が抑制されることを新たに見出した。そこで、平成29年度はCsAによるIL-5産生制御のメカニズムおよび分子機構を解析し、ILC2活性化制御を介したアレルギー性疾患治療応用への基盤を確立することを目的とした。 IL-5/VenusマウスにCsAを2週間投与し、システインプロテアーゼであるパパインで肺の炎症を誘導したところ、肺におけるILC2が減少し、IL-5産生が抑制された。また、好酸球数の減少と肺組織への炎症細胞の浸潤抑制も観察された。ILC2の減少・IL-5産生抑制は、T細胞やB細胞が存在しないRAG2欠損マウスでは起こらず、サイトカインで刺激したILC2にCsAを添加したin vitroの培養においても確認されなかったことから、CsAはILC2の活性化を間接的に制御していることが考えられた。さらに、RAG2欠損マウスにT細胞を移入することで、CsA投与によるILC2の活性化抑制が認められた。以上の結果から、CsAはT細胞の活性化を抑制すると同時に、ILC2維持と活性化を抑制し、肺の炎症を抑制することが明らかとなった。
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