研究課題
節足動物は病原体の他にも様々な微生物を保有し、節足動物-共生細菌-病原体の三者は互いに影響を及ぼしながら存在している。この相互関係の理解には、「どの節足動物」が「どのような種類の微生物を保有」し、その微生物が「どのような機能を有するのか」を知る必要がある。本研究では、特に節足動物媒介性感染症の被害が深刻なアフリカ地域を対象とし、所属研究機関のザンビア海外拠点を中核に近隣アフリカ諸国の吸血性節足動物の収集を行う。そして、吸血性節足動物が保有する細菌叢を特定すると共に、新規病原性細菌の検出を行う。次に、保有細菌が節足動物宿主の免疫・代謝に関わる役割を特定する。これらを基に、節足動物-共生細菌-病原体の三者の相互関係に着目した感染症の新しい制御・予防方法の確立に向けた情報基盤を構築する。昨年度に引き続き、ザンビア共和国にてマダニ約2500個体の他、ウシジラミ、コウモリバエをそれぞれ約400と約20個体を環境中ならびに野生・家畜・伴侶動物等から採集し、乳剤の作製および核酸の抽出を行った。昨年度日本に送ったサンプルのうち116検体の細菌叢解析を次世代シーケンサーを利用して行った。その結果65検体で細胞内寄生細菌(Rickettshia、Coxiella、Francisella等)が検出され、得られたリードの80%以上が細胞内寄生細菌由来である検体が6個存在した。また、2検体からは、Waddlia属の細胞内寄生細菌も検出された。本属は、流産との関係が示唆されている細菌である。
3: やや遅れている
サンプルの採集ならびにサンプルの輸送に関しては順調に進んでいる。ただし、本年度は、日本への一時帰国が1回だけになり、当初予定していた回数の解析を行えなかった。よって、次世代シーケンサーによる保有細菌叢の解析による新規病原体ならびに細胞内寄生細菌の検出がやや遅れている。
マダニの採集は、本年度で十分量が確保できた。次年度は、蚊の採集を考えている。蚊の鑑別技術は持っていないため、日本で蚊の種鑑別研修コースを受ける。次世代シーケンサーによる保有細菌叢の解析を精力的に進め、新規病原体ならびに細胞内寄生細菌の検出を実施する。並行して、細菌叢解析の結果を参考にサンプルを選定し、細胞内寄生細菌の分離・培養を試みる。
本年度は、日本への一時帰国が1回だけになり、当初予定していた回数の細菌叢解析を行えなかった。よって次年度は、次世代シーケンサーによる解析の回数を増やす。また、マダニ、ウシジラミ、コウモリバエと吸血性節足動物を採集してきたが、次年度は、蚊の採集を考えている。蚊の種鑑別法ならびに採集方法の取得のため、蚊の研修会に参加する予定である。
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Ticks and tick-borne diseases.
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