研究課題
節足動物は病原体の他にも様々な微生物を保有し、節足動物-共生細菌-病原体の三者は互いに影響を及ぼしながら存在している。この相互関係の理解には、「どの節足動物」が「どのような種類の微生物を保有」し、その微生物が「どのような機能を有するのか」を知る必要がある。本研究では、特に節足動物媒介性感染症の被害が深刻なアフリカ地域を対象とし、所属研究機関のザンビア海外拠点を中核に近隣アフリカ諸国の吸血性節足動物の収集を行う。そして、吸血性節足動物が保有する細菌叢を特定すると共に、新規病原性細菌の検出を行う。次に、保有細菌が節足動物宿主の免疫・代謝に関わる役割を特定する。これらを基に、節足動物-共生細菌-病原体の三者の相互関係に着目した感染症の新しい制御・予防方法の確立に向けた情報基盤を構築する。最終年度は、軟ダニ類、硬ダニ類ならびにウシジラミの細菌叢解析を実施した。軟ダニ類のArgas walkeraeでは、Ehrlichia、Rickettsia、Anaplasma属細菌が検出できたが、細菌叢の7割強が属レベルで同定できなかった。硬ダニ類では、Ehrlichia、Rickettsia、Anaplasma、Coxiella属細菌が優占種であった。硬ダニ類89サンプル中にこれらの細菌が細菌叢の8割以上を占めるサンプルが30検体もあった。一方、ウシジラミでは、上記の細菌属は検出されず、優占種はSerratia属細菌で細菌叢の8割以上を占めていた。このように、複数の節足動物で細胞内寄生細菌の検出に成功したが分離には至らなかった。また、ザンビアで初めての回帰熱患者から分離された新規ヒト病原性ボレリア属細菌が、洞窟で得られた軟ダニ(Ornithodoros fainii)からも検出された。
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Journal of Veterinary Medical Science
巻: 81 ページ: 401~410
https://doi.org/10.1292/jvms.18-0483
Clinical Infectious Diseases
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
https://doi.org/10.1093/cid/ciy850