研究実績の概要 |
細菌由来のクオラムセンシング物質AI-2が原生動物に対してどのような影響を与えるかを検証するため、AI-2存在下における原生動物の表現型試験を実施した。試薬であるAI-2(OMM Scientific, USA)は当初予定通り入手することができ、実験に供した。原生生物のアメーバ(Acanthamoeba castellani strain)および繊毛虫(Tetrahymena thermophila)はいずれもPYG培地にて培養して用いている。アメーバは当初予定していたC3アメーバに加え、本研究室が保有する土壌由来アメーバ(S13WT、共生細菌を保有)およびその誘導株(S13RFP、共生細菌を除菌;S13HS-T3、別種の共生細菌を再感染)の4種にて比較している。 既報(Bansal et al., Appl Microbiol Biotechnol 2008)に基づき、AI-2濃度は0.001mM, 0.01mM, 0.1mMの3段階(および陰性対称)に設定した。アメーバ、繊毛虫ともに、増殖速度(12時間ごとの細胞数カウント)や運動性(顕微鏡下での観察)においては、濃度変化に伴う有意な変化は認められなかった。アメーバにおけるシスト化誘導実験においても有意な変化はみられなかった。FITCラテックスビーズを用いた貪食・取り込み能比較においては、一部で変化が認められたため、現在三重測定を行なって有意な差かどうかを検証中である。 現時点においては、クオラムセンシング物質AI-2が原生動物に与える影響を明らかにできていない。今後、タンパク発現実験や細胞障害性試験を行なうことで、他の側面から影響の解明を試みる。
|