研究課題/領域番号 |
16K19117
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
見市 文香 (三田村文香) 佐賀大学, 医学部, 助教 (70576818)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 赤痢アメーバ / シスト形成 |
研究実績の概要 |
寄生虫疾患は、発展途上国を中心に、地球規模で甚大な被害をもたらしている脅威の感染症である。未だに有効な治療法が確立していない疾患が多く存在しているのが現状である。寄生虫疾患の病原体、つまり寄生虫の多くで、ミトコンドリアが退化していることが知られている。退化したミトコンドリアは、ミトコンドリア関連オルガネラ(MRO)と総称され、その特殊性・重要性が徐々に解明されてきている。我々はこれまでに、赤痢アメーバの退化したミトコンドリア”マイトソーム“が産生するコレステロール硫酸(CS)が、シスト形成制御に必須な分子であることを明らかにした。シスト形成は次の宿主への唯一の伝播経路であり、その阻害は感染拡大を阻止することが出来るため着目されてきたが、分子機構は不明な点が多く、特に制御機構については未だに解明されていない。本研究では赤痢アメーバのシスト形成制御の分子機構をCSを鍵分子として解析を行い、その全容を明らかにすることを試みている。 最初にCSの機能を解明するために、シスト形成において、CSがどの時期に必須であるかを解析した。通常の培養条件において、シストの形成には72時間を要する。72時間を6時間ごとに区切り、CSの有無で形成されるシスト数の比較を行った。結果、CSはシスト形成誘導後、6-30時間、つまりシスト形成の初期に作用することが明らかになった。 次にCSによるシスト形成の促進を阻害する化合物の探索に必須な、形成されるシスト数の測定を短時間で行う方法論の検討を行った。これまでに、新規方法論の開発に繋がる結果が蓄積されてきており、さらにこの方法を用いた阻害剤の探索に着手している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
CSの機能がどの時期で必須であるかを解明し、誘導後初期に作用することを明らかにした。これによりCSの機能解明を初期に限って解析することができている。また、形成されるシスト数の測定を短時間で行う方法論の検討を行い有用な方法を得ることができた。これまで形成されたシストの数は界面活性剤の処理を行ってから染色、顕微鏡で観察して計測する必要があり、長時間かかるだけでなく、サンプルの数を増やすことができない、計測するヒトによって誤差が生じるなどの多くの問題があったが、これをすべて解消できると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
流シグナルを解析する。関わる分子群を同定し赤痢アメーバシスト形成制御の分子機構を明らかにする。また、初年度に開発した、形成されるシスト数の測定を短時間で行う方法論を用いて、CSによるシスト形成誘導促進を阻害する化合物を探索する、またCS分子の合成に関わる酵素や分解に関わる酵素の阻害剤を探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた物品の購入が次年度になったこと、参加予定の学会が次年度開催になったことにより次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
培養器具などの購入、および学会参加のための旅費として使用を予定している。
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