赤痢アメーバは、ヒトの大腸に感染しアメーバ赤痢を引き起こす病原虫である。感染は、アメーバ赤痢罹患者の糞便中のシストに汚染された食物や水の摂取によって引き起こされ、発展途上国では、年間10万人の死者が報告されている。臨床薬が限られており病原性の解明、新規薬剤開発が危急の課題である。 赤痢アメーバの生活環はシスト期と栄養体期、2つの時期で構成されているが、感染はシストの経口摂取によるため、シスト形成は、寄生原虫の寄生性・病原性に関わる重要な生物機構である。近年我々はこのシスト形成に原虫自身が産生するコレステロール硫酸が必須であることを報告した。 本研究課題では、シスト形成の新規な解析法としてフローサイトメトリー法の導入を試みた。従来の方法は、形成されたシストの数を顕微鏡下で計測する方法であり、得られる情報が限られていた。栄養体の膜構造をEvans blueで、そしてシスト壁の主成分であるキチンをCalcofluorで蛍光染色することで、栄養体とシストをそれぞれ、(Evans blue+calcofluor-)、(Evans blue-Calcofluor+)という細胞集団として明確に区別して検出することに成功した。 本方法は大量のサンプルに対して、形成されたシスト数を迅速・再現性良く定量処理できるため、シスト形成を阻害する化合物のスクリーニングが可能となった。トライアルとして400化合物のスクリーニングを行った結果、シスト形成を顕著に阻害する化合物を17個得ることができた。
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