研究課題
ヘリコバクター・ピロリ病原因子CagAによるヒトがんタンパク質SHP2の異常活性化機構を明らかにするため、CagA-SHP2相互作用部位のX線結晶構造を解明した。構造情報に基づいて各種点変異体を導入した物理化学的、生化学的、ならびに細胞生物学的解析から、CagAがSHP2を活性化するために重要な分子構造を明らかにした。CagAは胃がんの多発する東アジア諸国で単離される東アジア型CagAと、世界中のその他の地域で単離される欧米型CagAに大別される。本研究から東アジア型CagAは欧米型CagAに比較しSHP2に対して約100倍高い親和性を有し、この結合に依存して細胞運動能・浸潤能が上昇することが示され、CagAの発がん活性の強弱を規定する構造基盤が明らかになった。上記の研究成果をまとめ国際科学誌Cell Reportsに発表した。解明したCagA-SHP2相互作用の構造情報に基づきCagAによるSHP2の活性化を特異的に遮断する低分子化合物の探索を実施した。複数の化合物ライブラリーを用い、CagAによって活性化されたSHP2の酵素活性を阻害する化合物をスクリーニングした。1次ヒット化合物の中からSHP2の触媒ドメイン単体に強く作用したものを除外し、SHP2が活性化するための構造変化を阻害する可能性のある化合物を数十種類得た。これらのシード化合物は絶対値としての阻害活性は顕著でないことことから、今後、化合物とSHP2との共結晶化等を通じた複合体構造解析により化合物の結合部位と結合構造を順次決定し、構造最適化を通して阻害剤開発を進める。
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Cell Reports
巻: 20 ページ: 2879-2890
10.1016/j.celrep.2017.08.080
http://www.m.u-tokyo.ac.jp/news/admin/release_20170919.pdf