ピロリ菌の慢性感染は、胃炎、胃潰瘍、胃癌そしてMALTリンパ腫の発症に密接に関わっている。本研究を進めていくと、ピロリ菌は自身が保有するある小さなRNA(sRNA)を用いることで、酸化ストレスによる細胞障害を免れていることが明らかとなった。さらに本研究では、sRNA-X遺伝子の欠損ピロリ菌株を作製し、解析することで、sRNA-Xが酸化ストレス応答に重要な遺伝子であるチオレドキシン関連遺伝子の発現を安定化するという新規メカニズムを見つけた。sRNA-Xを欠損したピロリ菌は胃への定着能も著しく減少したことから、このような小さなRNAがピロリ菌感染による胃の疾患に関与していることも示唆された。
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