類鼻疽は、類鼻疽菌(Burkholderia pseudomallei)の感染によって引き起こされる細菌性感染症である。深刻な全身性症状を伴い、致死率も非常に高いが、その発症機構は不明である。申請者は類鼻疽菌のマウス感染モデルを構築し、複数の野生株でマウス感染実験を行った結果、類鼻疽菌は宿主観戦時に宿主組織への強い侵襲性を示すことを見出した。そこで、本研究は、トランスポゾン変異導入と大規模シークエンス解析を組み合わせたTn-seq解析によって類鼻疽菌の侵襲性を制御する細菌側因子の同定を目的とした。 前年度は、類鼻疽菌のトランスポゾンライブラリーを用いたTn-seq法を実施し、複数の侵襲性に係る病原性候補因子を得た。本年度は、それぞれの候補遺伝子の欠損株を作製することで、マウス病原性への影響を解析した。まず、類鼻疽菌の欠損株作製法の確立を行った。ポジティブ選択マーカーとしての薬剤耐性遺伝子(KanRもしkはTpR)とネガティブ選択マーカーとしての変異型フェニルアラニンtRNA合成酵素遺伝子(mut-pheS)を用いることで、任意の遺伝子欠損株の作製に成功した。この欠損株作製法を利用して、Tn-seqによって得られた病原性候補遺伝子の欠損株を作製した。作製した5つの欠損株のうち、莢膜合成系遺伝子(wcbD)の欠損株は顕著な病原性の低下が見られたものの、他の4つの変異体は病原性に影響を示さなかった。 今後はTn-seq解析を複数回行い、さらなる候補遺伝子を得、病原性遺伝子の同定を試みる。
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