研究課題/領域番号 |
16K19128
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
日根野谷 淳 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 助教 (20548490)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | Escherichia albertii / Shiga toxin 2f / マウス / 病原性 |
研究実績の概要 |
新興腸管感染症細菌Stx2f産生Escherichia albertii(Stx2f-Ea)の病原性をin vivoレベルで明らかにすることを目的として、平成28年度は(1)Stx2f-Eaのマウス経口感染致死モデルの構築、(2)マウス致死の責任因子の同定のための研究を遂行し、以下の結果を得た。 (1)Stx2f-Eaの感染条件を最適化させるため、3つ(マウス系統、感染菌数、抗菌薬)の条件検討を行った。同条件下でStx2f-EaをICRおよびBalb/cマウスに感染させたところ、糞便中排菌数および致死率において系統の違いは認められなかった。感染菌数として10の1乗から8乗までのStx2f-Eaを投与したところ、10の1乗でも致死率100%であったため、投与菌数は10 CFUとした。抗菌薬については、抗菌薬A処置群ではマウスの致死率が0%であったのに対し、抗菌薬B投与群では100%であった。しかし低率ながら、腸内フローラとして抗菌薬B耐性菌が存在し、致死率に影響することがあるため、それらも除去できる抗菌薬Cを追加したBおよびCの投与により、致死率100%の感染条件を得ることができた。 (2)供試菌株Stx2f-Eaの既知の病原遺伝子(stx2f、eae、cdt)欠損クローンを得ることができた。表現型の消失を確認するため、抗Stx2f抗血清および抗CDT抗血清を作製した。得られた抗血清を用いたウエスタンブロッティング、および細胞毒性試験によりそれぞれのクローンにおいて毒素産生能が消失していることが確認できた。また、いずれの欠損株も野生株と同等の増殖能を保持していることも確認できた。以上より、供試菌株の各種病原遺伝子欠損株を作製できた。現在までに各種欠損株を用いた感染実験を1回実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の実施項目(1)Stx2f-Eaのマウス経口感染致死モデルの構築、(2)マウス致死の責任因子の同定については、予定していた項目を概ね完了できた。平成29年度の実施項目である感染マウスの病態解析、既にパイロット実験を通して条件検討を開始しており、予定通り遂行できると考えている。以上より「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度にStx2f-Eaのマウス経口感染致死モデルを構築することができたので、次年度は作製した病原遺伝子欠損株を用いた感染実験の再現性を確認し、信頼性のあるデータを得る。並行して、感染マウスについて病理学的および生化学的アプローチにより病態解析を進めている予定である。これらによりStx2f-Eaの病態発症機構の解明に繋げていきたい。
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