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2016 年度 実施状況報告書

ピロリ菌CagAによるがんタンパク質SHP2脱制御機構の構造生物学的解析

研究課題

研究課題/領域番号 16K19130
研究機関大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構

研究代表者

長瀬 里沙  大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 研究員 (60768034)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2018-03-31
キーワードピロリ菌 / CagA / SHP2
研究実績の概要

胃がんは世界部位別がん死亡数の第二位を占める。近年の大規模疫学調査ならびに動物モデルを用いた研究からピロリ菌cagA遺伝子陽性株感染と胃がんとの密接な関連が明らかとなり、胃がん発症機序への理解や胃がん治療への応用にCagAの生物活性発現における分子機構の解明が重要な意義を持つものと期待される。これまでの研究から、ピロリ菌CagAを介する胃がんの発症においてCagA-SHP2複合体形成によるSHP2チロシンホスファターゼの機能的脱制御が重要な役割を果たすことが示されている。本研究ではX線結晶構造解析によりCagA-SHP2複合体の立体構造を解析することで、CagAによるSHP2活性化の分子基盤を解明することを目的としている。
本年度の研究実施計画として初めに予定していた組換え型チロシンリン酸化CagAおよび組み換え型SHP2の調整を行った。CagAには分子多型があり、本研究では標準的なCagAである欧米型(EPIYA-CおよびEPIYA-CC)ならびにSHP2結合能の強い東アジア型(EPIYA-D)を比較する計画である。本項目に関しては、予定通り全ての変異体の発現・精製が完了した。
本年度の研究実施計画の2項目であるチロシンリン酸化CagAペプチド-SHP2複合体の結晶構造解析はEPIYA-Dペプチド-SHP2複合体の結晶化スクリーニングから開始した。嫌気チャンバー内でのスクリーニングの結果、結晶が得られる条件が見つかったが、得られた結晶は非常に脆くX線回折実験に用いることができなかった。その他のCagAペプチドに関してはこれから結晶化スクリーニングを開始する予定である。
本年度の最後に予定していた全長CagA-全長SHP2複合体の結晶構造解析に関してはゲルろ過クロマトグラフィーにより複合体の試験管内再構成が確認されたため、順次、結晶化スクリーニングを開始する予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初の計画では初年度までにX線回折実験を行う予定であったが、現時点では結晶化条件のスクリーニングを行っている段階である。しかし、回折実験に用いるには質的に不十分ではあるが、結晶が得られる結晶化条件が見つかっているため、その条件を基に結晶化条件の最適化を行うことで回折データを収集できる結晶が得られると考えている。
以上のように当初の計画からは多少の遅れがあるが、結晶が得られる条件の決定が本研究における最も大きな障壁であると考えられるため、現状としては大きな遅れではないと考えている。

今後の研究の推進方策

今後はまず、EPIYA-DペプチドとSHP2との複合体の結晶化条件の最適化を行う。結晶化条件が決定した場合、その条件を基に他のCagAペプチドを用いたSHP2との共結晶化を行う。さらに、全長CagAを用いて同様の結晶化条件における結晶化を行う。なお、それぞれの結晶化の際には最初に得られた複合体の結晶を用いたヘテロマイクロシーディングも試みる。結晶が得られた場合には随時X線回折実験を行う。回折データが収集でき次第、各種複合体の結晶構造の決定を目指す。結晶構造解析により立体構造情報が得られた場合、当初の計画通り、CagA-SHP2複合体形成を阻害するCagA変異体分子の作製および立体構造解析より得られたCagA変異体分子の生物学的機能の解析を開始する。

次年度使用額が生じた理由

本年度の研究計画では結晶化から回折データの取得、さらに構造解析を行う予定であった。しかし、現状として結晶化条件のスクリーニングを行っている段階であり、やや遅れが生じている。従って、研究の遅れに伴い本年度使用額が次年度に持ち越された。以上の事由から次年度使用額が発生した。

次年度使用額の使用計画

上記のように当初の研究計画からやや遅れが出ているために次年度使用額が発生しているが、次年度の早い段階で結晶が得られ、回折データが収集できる見通しである。従って、本年度に計上していた解析用PCも早い段階で購入する予定である。さらに、現段階では1種類のペプチドを用いて結晶化スクリーニングを行っているが、結晶化条件が決定し次第すぐに複数種類のペプチドを購入し結晶化スクリーニングを開始する予定である。実験の進行に伴い、本年度に使用する予定であった試薬も購入する。それ以降は2年目の研究計画通りに進行すると考えられるため、次年度使用計画に従って使用していく。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2016

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] EPIYA-Cセグメントの重複が規定するピロリ菌CagAタンパク質の胃発がんリスク2016

    • 著者名/発表者名
      長瀬里沙、林剛瑠、千田俊哉、畠山昌則
    • 学会等名
      第39回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)
    • 年月日
      2016-11-30 – 2016-12-02

URL: 

公開日: 2018-01-16  

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