研究課題/領域番号 |
16K19131
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
平松 征洋 大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (90739210)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 百日咳 / ワクチン / BipA / バイオフィルム |
研究実績の概要 |
百日咳菌の病原因子の産生は、BvgAS二成分制御系によって調節されている。特に、ヒト上気道の体温 (30℃)で培養した百日咳菌の状態はBvgi phaseと呼ばれ、感染の成立に寄与する可能性が高い。本研究の目的は、Bvgi phaseで強く発現するタンパク質Bordetella intermediate protein A (BipA)の機能を解析し、百日咳菌の感染成立機構の解明ならびに新規ワクチンの開発を目指すものである。本年度は、下記項目を実施した。 1) 抗BipA抗体を用いたウエスタンブロットにより、ほとんどの百日咳菌国内流行株がBipAを発現していることを確認した。また、BipAを発現しない株を詳細に調べたところ、百日咳菌の病原因子の産生を調節するbvgSの変異に起因することが明らかとなった。本成果については、bvgS遺伝子に変異を持つ臨床分離株の発見として報告した (Hiramatsu et al, Pathog Dis 2017)。 2) 相同組換え (double cross-over法)により、百日咳菌のワクチン株であるTohama株および臨床分離株のゲノム上のbipA遺伝子を欠失したBipA欠損株を作製した。 3)ヒト肺由来細胞株A-549を用いて、BipAが百日咳菌の細胞接着に与える影響を検討した。その結果、Bvgi phaseの百日咳菌BipA欠損株は、親株 (BipA発現株)と比較し、細胞接着能が低いことを明らかにした。本結果は、BipAが接着因子として機能することを示している。 4) BipAが百日咳菌のバイオフィルム形成に与える影響を検討した。その結果、Bvgi phaseのBipA欠損株は、親株より高いバイオフィルム系性能を有することが明らかとなった。本結果は、BipAがバイオフィルム形成を抑制する因子として機能することを示唆する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、「百日咳菌の感染成立機構の解明」を目的として研究を実施した。本年度の成果により、BipAがほとんどの百日咳菌国内流行株で発現していること、百日咳菌のヒト肺由来細胞への感染時に細胞接着因子として機能することを明らかにした。よって、おおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、本年度の研究に引き続き、百日咳菌BipA欠損株を用いて、BipAが百日咳菌のマウスへの感染に与える影響を検討する。さらに、当初の予定通り、「BipAのワクチン抗原としての有用性の検討」、「BipAを含む精製百日せきワクチンの作製」の2項目を実施する。 「BipAのワクチン抗原としての有用性の検討」:BipAを発現するDNAワクチンを作製し、マウス体内へ注入後、百日咳菌に対する感染防御効果を評価する。また、BipAが細胞性免疫と体液性免疫のどちらを強く誘導するかを検討する。 「BipAを含む精製百日せきワクチンの作製」:現行の精製百日せきワクチンはBipAを含有していない。よって、BipAを分泌する培養条件を検討し、現行ワクチンの主要抗原であるPTとFHAに加えてBipAを含む培養上清から新規ワクチンを精製する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度、研究代表者の異動により実験の一時中断があったため、予算の一部が次年度使用額として発生した。
|
次年度使用額の使用計画 |
本年度の実施を予定していたマウス感染実験を次年度に行うため、その際に必要となる実験動物、試薬、消耗品の購入費用に充てる。
|