研究課題
多剤耐性緑膿菌による院内感染は、医療安全を根底から脅かしている。申請者はこれまでの多剤耐性緑膿菌株の全ゲノム解析を通し、薬剤耐性遺伝子がプラスミドを介して菌種間に水平伝播することによって播種されるだけではなく、特定の株では薬剤耐性遺伝子を積極的に染色体ゲノムに取り込むことによって流行株に変貌していくことを明らかにした。本研究の目的は、申請者が明らかにした完全長ゲノム情報を用いて多剤耐性流行株が外来遺伝子を染色体に積極的に取り込む機構に関与する遺伝子を特定することである。予備解析により得られた10候補遺伝子を薬剤感受性緑膿菌株に発現させ、外来遺伝子である16S rRNAメチラーゼarmAの染色体ゲノムへの取り込みに関与する因子の特定を試みた結果、どの遺伝子群もarmAの取り込みを促進する結果は得られなかった。16S rRNAメチラーゼは10種類知られているが、それぞれ菌種によって嗜好性が確認されている。今後は緑膿菌でアミノグリコシド高度耐性を付与するrmtAをマーカーに実験を行う。さらに、大腸菌で確認されている移動促進因子IS-Enhancer-Element(IEE)類似遺伝子(アミノ酸ホモロジー37%)も同様に16S rRNAメチラーゼarmAの取り込みを試みたが、コントロールとの有意差は見られなかった。こちらも取り込みを確認するマーカーである16S rRNAメチラーゼarmAに問題がある可能性が示唆され、今後はrmtAをマーカーに実験を行う予定である。
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