研究実績の概要 |
ワクチン開発においてアジュバントは非常に重要である。現在、インフルエンザに対する経鼻投与型ワクチンの開発がなされており、二本鎖RNAの合成アナログであるpolyI:Cとの同時投与によって非常に高い予防効果を発揮することが明らかとなっている。しかし、polyI:Cの抗体産生増強の作用機序については全く研究がなされていない。本研究では経鼻投与されたpolyI:Cが鼻粘膜に存在する鼻腔関連リンパ組織 (nasal-associated lymphoid tissue: NALT) を介して、ワクチン特異的抗体産生をどのような分子機構で増強するのかを明らかにすることを目的として研究を行った。経鼻投与したpolyI:CはNALTに存在するCD103陽性樹状細胞に取り込まれ、BAFFの発現を誘導することで、B細胞でのIgAクラススイッチを誘導することを見出した。CD103陽性樹状細胞にはTLR3が発現しており、取り込まれたpolyI:CはTLR3と共局在した。CD103陽性樹状細胞を欠損するマウスではpolyI:Cによる抗体産生増強はみられず、polyI:Cによる抗体産生増強機構はNALTに存在するCD103陽性樹状細胞に強く依存することが示された。この応答はTLR3/TICAM1依存的であった。polyI:CはNALT に存在するB細胞も活性化したが、B細胞の活性化はCD103陽性樹状細胞を欠損するマウスにおいても観察されたことから、polyI:CによるB細胞の直接的活性化は必須ではないことが示された。polyI:C経鼻投与によるNALT T細胞での活性化状態は、有意な差は観察されなかった。polyI:CはNALT 樹状細胞を活性化するとともに、IL-6, IL-10などのサイトカインを産生し、IgAクラススイッチに偏向させることが明らかとなった。
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