研究課題/領域番号 |
16K19136
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
下平 義隆 山形大学, 医学部, 助教 (30445746)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | C型インフルエンザウイルス / CM2 |
研究実績の概要 |
C型インフルエンザウイルス (C型ウイルス) のCM2 (115アミノ酸) はIII型膜タンパク質であり、短い細胞外領域 (1-23位)と膜貫通領域 (24-46位)、長い細胞質領域 (47-115位) から構成される。当教室では、CM2がウイルス増殖に必須であることや、ウイルスゲノムのウイルス粒子への取り込み(パッケージング)及び脱殻の過程に関与することを明らかにした。CM2は塩素イオンチャネル活性と水素イオンの透過性を示す。これらの活性にはCM2の4量体形成が必須であると考えられている。最近、申請者はCM2の細胞質領域の73-75位の配列が4 量体の形成効率や糖鎖の成熟に関与することを明らかにした。平成28年度は、この配列がウイルス増殖に及ぼす影響を解析することを目的とした。 まず、73-75 位をAlaに置換した変異CM2 (CM2 Ala 73-75) を持つ組換えウイルスを作製し野生型ウイルスと増殖を比較したところ、変異ウイルスで増殖能の低下が認められた。次に、ウイルス増殖過程のどの段階が障害されているかを明らかにするため、C型ウイルスと同じ構造を持ち、内部に1本のレポーター遺伝子 (GFP-vRNA) を持つウイルス様粒子(VLP)を作製し、ゲノムのパッケージングについて解析した。CM2 Ala 73-75を持つVLPの産生量に差は認められなかった。VLP中のGFP-vRNA量は野生型より少し減少したが有意差は認められなかった。一方、ウイルス粒子及びVLPに取り込まれたCM2をウェスタンブロット法で解析したところ、量体形成は野生型と同様だったが、CM2の量は減少していた。従って、73-75位の変異によりCM2の糖鎖成熟や細胞膜への輸送が抑制されウイルス粒子へのCM2の取り込み量が減少し、その結果CM2の機能が抑制されてウイルス増殖能が低下する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、CM2の細胞質領域の73-75位の配列がウイルスの増殖に影響を及ぼすか否かについて解析し、増殖メカニズムに及ぼす影響の解析に着手する事が目標であった。まず、CM2の73-75位のアミノ酸配列を変異させた組換えウイルスを作製し、この配列がウイルス増殖に関与することを明らかにした。次に、同変異CM2を持つVLPを作製し、この配列がウイルスゲノムのパッケージングには大きな影響を及ぼさないことを明らかにした。さらに、これらの解析過程で、この配列はCM2のウイルス粒子への取り込みに関与することを示唆する結果を得た。以上の通り、当該年度の目標はほぼ達成できたことから、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、アミノ酸配列の変異により障害された作用機序を明らかにすることを目的に、CM2の73-75位の配列が脱殻に及ぼす影響について解析を行う。まず、野生型及び変異型CM2を持つVLPを同じvRNAコピー数となるように調製してHMV-II細胞へ感染させる。VLP感染直後と感染1時間後 (脱殻後) の細胞から核を分画し、核内に移送されたGFP-vRNA量をリアルタイムPCRで定量し比較する。さらに、核内に移送されたGFP-vRNA由来のタンパク質発現量の比較も行う。同様に各VLPをHMV-II細胞へ感染させ、24時間後及び48時間後の細胞内のGFPタンパク質の発現量をウェスタンブロット法により解析する。以上の解析により、CM2の73-75位のウイルス増殖における役割を明らかにし、これらの成果を学術雑誌に投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定より物品を安価に購入できたため、未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
計画に変更はなく、次年度において研究試薬等の購入に繰越額も含めて使用し、効率的に研究を遂行する。
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