研究課題/領域番号 |
16K19137
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
中島 謙治 浜松医科大学, 医学部, 助教 (50633806)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | B型肝炎ウイルス / スプライシング / ヌクレオカプシド |
研究実績の概要 |
B型肝炎ウイルス(HBV)の中間複製体であるプレゲノムRNA(pgRNA)のスプライシングは、HBVすべての遺伝子型で保存されている。また肝癌発症に先立ってpgRNAスプライシング比率が上昇することが報告されており、病態と関連すると考えられている。しかしながら、pgRNAスプライシングのHBV生活環における役割はいまだに不明である。本研究ではpgRNAスプライシングおよびspliced pgRNA産物が、HBVの遺伝子発現・複製・粒子形成にどのように関与するかを明らかにすることを目的としている。 HBVスプライシングアクセプターに変異を導入したスプライシング欠損HBVを作成、培養肝細胞へ導入しウイルスタンパク質発現、粒子形成能を野生型と比較したところ、HBsタンパク質発現は野生型と差が見られなかったが、HBcタンパク質発現およびHBcタンパク質によって形成されるHBVカプシド量はスプライシング欠損により有意に減少することが明らかとなった。そこで、spliced pgRNA配列から予測されるオープンリーディングフレームの情報を基にして、野生型およびスプライシング欠損HBVが複製している細胞で発現するHBcタンパク質に関してSH基修飾剤を用いて解析を行ったところ、spliced pgRNAからC末端システイン1つが欠損したHBcタンパク質(HBc-delC)が発現することが明らかとなった。さらにpgRNAスプライシング欠損によるHBVカプシド減少はHBc-delCの共発現によりキャンセルされた。 これらの結果から、spliced pgRNA由来HBc-delC、すなわちHBV pgRNAスプライシングはHBVカプシド形成に重要な役割を果たすことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度、スプライシング欠損HBVを用いて、その性状を明らかにすることを主な研究目的とした。その結果HBVスプライシングはカプシド形成に重要であることを示唆する知見を取得することができた。
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今後の研究の推進方策 |
HBc-delCがHBV粒子形成に関わることが明らかとなったので、今後はHBc-delCが実際に粒子に含まれているか?あるいはシャペロンとして働いているのか?を明らかにする。またHBc-delCの存在がHBV粒子の感染性やHBV複製効率にどのような影響を与えるかを解析する。
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