BCLX阻害によるフラビウイルス感染細胞にアポトーシスを誘導する生理学的意義を考察するために、日本脳炎ウイルス感染細胞とマクロファージの共培養を行った。その結果、BCLXを阻害することによりマクロファージの貪食が有意に更新することがわかった。無処理のHuh7細胞では貪食の亢進が見られなかったことから、BCLXを阻害することによりEat Meシグナルが提示され、貪食が亢進したと考えた。そこで、生体内におけるBCLX阻害の影響を検討した。BCLX欠損マウスは胎生致死であるため、CRISPRによりBCLXヘテロマウスを作製した。このマウスを野生型マウスと共に致死量の日本脳炎ウイルスを感染させると、BCLXヘテロマウスでは有意に生存率が改善された。また、野生型マウスにおいてBCLX阻害剤を投与することによっても、生存率の改善が見られた。感染部位での炎症性サイトカイン量やウイルスRNA量はBCLX阻害することで顕著に低下していた。 これまでの結果からフラビウイルス感染細胞では、MCL1の発現が低下しており、BCLXを阻害することでウイルス感染細胞にアポトーシスを誘導することで、Eat Meシグナルを効率良く提示させることによりマクロファージによる貪食を促進させ、ウイルス感染の拡大を防ぐことができることがわかった。したがって、BCLXを阻害できる化合物は広範囲なフラビウイルスに対する治療薬としての可能性を見出した。
|