研究課題/領域番号 |
16K19141
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
豊田 真子 熊本大学, エイズ学研究センター, 研究員 (70771129)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | SERINC3/5 / Nef / HIV-1 / HLA |
研究実績の概要 |
HIV-1は,アクセサリー蛋白質(Vif, Vpr, Vpu, Nef)と総称される固有の蛋白質を持つ。なかでもNefはウイルス粒子の感染性を増強するという特徴的な機能を持ち、病原性の発現に重要な因子と考えられているが、ウイルス粒子の感染性を増強させる分子機序はこれまで長らく解明されていなかった。近年、HIV-1感染性を抑制する新しい宿主制限因子(SERINC3, SERINC5)が同定され、Nefがその働きを拮抗することが報告された。しかしながら、生体内のウイルス制御・感染病態に与える影響は、十分に解析されていない。本研究では国内外の特徴的なHIV感染者コホートを元に、ウイルスの感染性に及ぼすウイルス側因子のNefと抗HIV-1活性を示すホスト側因子のSERINCファミリーによる攻防がHIV感染病態形成に及ぼす影響を明らかにすることを目指す。本研究を進めるにあたって、予備検討としていくつかのコホートを用いインフォマティクス解析を行った。これにより、国内で集めた無治療のHIV-1慢性感染者のコホートにおいて、感染者のHLAクラスIアリルと相関するアクセサリー蛋白質の変異の探索および血漿ウイルス量との関連性を解析したところ、Nefにおいて免疫逃避に関わるアミノ酸変異の蓄積の総和が血漿ウイルス量に逆相関することを見出した。現在は実験室株を用いて、見いだされた変異がNefのSERINCファミリーへの拮抗機能およびNefに特徴的な機能(CD4やHLA クラスIの発現低下やウイルス複製能力の増強)に及ぼす影響を解析中である。加えて、感染者からのNef遺伝子のクローニングも進めており、並行して機能の解析を行う。また、統計学的に示唆されたNef変異と宿主HLAの相関に関して免疫学的な解析も視野に含めて進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
病態情報とリンクした感染者由来の検体を用いた統計解析により、相応の結果を得た。Nefの機能解析に関して方法はすでに確立しており、現在着手している段階である。以上のより、おおむね順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
Nefの機能解析のデータが揃ったところで、最終的なまとめに取り組んでいきたい。必要に応じて、異なるコホートの感染者由来のデータも含めて、包括的に対応していく。また、免疫学的な機能解析に関しては、共同研究を依頼し進めている段階である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に一部予定していたNefの機能解析および感染者検体からクローニングしたNef遺伝子断片を発現ベクターおよびプロウイルスベクターに組み込んだプラスミド作製が平成29年度に持ち越されたため、平成28年度の使用額が減少した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度はNefの機能解析をメインに行い、場合によっては免疫学解析も含めて進めていく。データを取得後はすみやかにまとめを行っていく。よって、主に試薬代に使用し、研究成果発表のための学会参加の旅費および論文投稿に使用する。平成29年度使用予定の169万円のうち、物品費に100万円、旅費に40万円、論文投稿に25万円、その他に4万円を使用する予定である。
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