研究課題/領域番号 |
16K19143
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
松本 祐介 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (00735912)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | パラミクソウイルス / リーダー配列 / ゲノム複製 / プロモーター |
研究実績の概要 |
パラミクソウイルス病態の多くはウイルス感染による細胞障害が重要な役割を果たしており、その分子メカニズムの解明が望まれている。本研究では、小児を中心とした呼吸器感染症を起こすヒトパラインフルエンザウイルス2型(hPIV2)を用いて、培養細胞における細胞障害機構を解析することを目的としてさまざまな実験を行った。リバースジェネティクス法を用いて、hPIV2のリーダー配列の中間部分に変異を加えたウイルスを作製した。この変異が入ることで、ウイルス感染における細胞死が強く誘導されることを見出した。この変異型hPIV2と野生型hPIV2感染細胞におけるウイルス由来RNAを定量的に解析した結果、変異型hPIV2では感染初期に過剰なウイルスmRNA転写が起こっていることが分かり、ウイルス蛋白質発現量バランスの乱れが細胞死の誘導に繋がっている可能性を見出し、論文として報告した。 hPIV2のリーダー部分の塩基配列の重要性をさらに検討するため、リーダー配列を他のウイルス由来のものに変更したウイルスを作製し、その増殖機構の解析を行った。その結果、ウイルス複製を容認するリーダー部分の塩基配列の特徴が明らかになり、遺伝的に近いウイルス間で重要な部分が保存されていることが明らかになった。 また、ウイルス増殖に携わる他のウイルス蛋白質にも着目した。核酸蛋白質(NP)のRNA結合領域の1アミノ酸(グルタミン)がパラミクソウイルスゲノムの複製プロモーターを認識するうえで重要な働きを持つことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
hPIV2のリーダー配列の変異によって細胞傷害が起こるメカニズムはウイルス蛋白質の発現バランスによってもたらされることが明らかになった。また、リーダー配列を他のウイルスのものに変更することで、ウイルスの複製レベルが変わり、プロモーター配列の重要性に関して新たな知見を得られた。さらに、hPIV2の核酸蛋白質のRNA結合領域のアミノ酸(グルタミン)がプロモーター配列認識に重要であることを明らかにした。以上のように、リーダー配列の一部分だけを対象として始まった研究課題であったが、ウイルス増殖に関してより広範囲にわたる知見が得られていることから、当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題では今後もhPIV2のポリメラーゼ関連蛋白質に着目して実験を進める。特に核酸蛋白質においてウイルスの複製を制御する重要なアミノ酸を明らかにしたことから、これがウイルスの複製・細胞障害性などにおける重要性を調べる。変異型hPIV2と野生型hPIV2の感染細胞における増殖能、ウイルスRNA・蛋白質合成分能の違いを子生物学的手法を用いて詳細に解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は多額の費用を要する実験が少なく、支出が予定より少なくなった。一方、来年度はイタリアで開催されるNegative Strand RNA virus meetingへの参加を予定しており、これに関する支出が多く計算される。この結果、本年度の予算を来年度に持ち越すことが研究遂行の上で適切であるという状況となった。
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