• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2016 年度 実施状況報告書

E型肝炎ウイルスのゲノムRNAの複製機構に関与する宿主因子の機能解析

研究課題

研究課題/領域番号 16K19144
研究機関自治医科大学

研究代表者

小林 富成  自治医科大学, 医学部, 助教 (00634164)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2018-03-31
キーワードE型肝炎ウイルス / レプリコン / リアルタイムRT-PCR法 / 細胞培養 / ウイルス複製
研究実績の概要

HEVのゲノムRNAの複製機構は未だよく分かっていない。そこで本研究では、細胞内におけるHEVゲノムRNAの複製機構を明らかとするために、従来のリバースジェネティクス法で用いるcDNA由来の全長RNAだけではなく、細胞内でゲノムRNAのみが複製するHEVレプリコンの構築を検討した。HEV感染性cDNAクローン由来のRNAをPLC/PRF/5細胞(肝癌細胞)に導入すると、HEV粒子が得られる。そこで、全長のゲノムRNAからORF2の領域に、レポーター遺伝子を組み込こんだHEVレプリコンを構築した。そのcDNAに由来するRNAを試験管内で合成したレプリコンRNAをPLC/PRF/5細胞に導入し、2日毎に培養上清の回収と培地の交換を行い10日間培養した。細胞内でレプリコンRNAが増殖しているかどうかを確認するために、細胞内からRNAを抽出し、複製中間体であるdsRNAをノーザンブロッティング法で検出すると、従来の全長ゲノムRNAを導入した場合と同等の効率で複製していることが分かった。また、ゲノムRNAの複製産物であるsubgenomic RNAから翻訳されるORF3タンパク質も同様の発現効率であることが示された。
また、感染性cDNAクローン由来のHEV粒子をPLC/PRF細胞に感染させて継代培養を10回繰り返した結果、ウイルスの増殖効率が100倍に上がった。このゲノムの全塩基配列を解析すると、ORF1領域内で6つの塩基配列が変異し、そのうちの2つはアミノ酸変異を伴うものであった。6つの変異の中で4つ(C1213T, T2557C, T2808C, A5054G)が増殖効率の上昇に関与していることが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

H28年度の研究目的は①HEVレプリコンの構築と細胞内での複製複合体の局在の解析である。HEVレプリコンの構築は研究実績の概要に記したように、細胞内でレプリコンRNAの増殖を確認することができた。さらに、ゲノムRNAの複製の指標であるdsRNAをノーザンブロッティング法で、ORF3タンパク質をウエスタンブロッティング法で検出することができた。しかし、ウエスタンブロッティング法及び免疫抗体染色法で解析したがレポータータンパク質を検出することができず、発現量が十分でなかったことが推測された。高発現がえられるよう、検討中である。
感染性cDNAクローン由来のHEVを継代培養することで、ウイルスの増殖効率が100倍になった。塩基配列を解析すると、ORF1領域の6つの塩基(C1213T, T2557C, T2808C, C3118T, C4435T, A5054G)が変異していることが確認され、そのうちの2つ(T2808CはValからAla、A5045GはIleからVal)はアミノ酸の変異を伴っていたが、アミノ酸変異を伴わない変異であっても高い増殖効率に関与していることを明らかにすることができた。

今後の研究の推進方策

H29年度の研究計画は、H28年度に解析することができなかった①HEVレプリコンの細胞内での複製複合体の局在と、②ゲノムRNAの複製に関与する宿主因子の解明である。まず、レポーター遺伝子をeGFPから、より蛍光強度が強いAcGFP(クロンテック社)、TurboYFPやTurboRFP (Evrogen社)に変更し、レポータータンパク質を検出する。また、in situハイブリダイゼーション法を用いて、細胞内でのRNAの局在を明らかとする。さらに、ショ糖密度勾配遠心法により、ゲノムRNAの複製に関与する宿主因子やウイルスタンパク質を分画し、MALDI-TOF/TOF型質量分析計を用いて解析を行う。最後に、siRNAを用いてゲノムRNAの複製に必要な因子をノックダウンし、同定した因子がHEVのゲノムRNAの複製に関与しているかを明らかとする。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2016

すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Characterization and epitope mapping of monoclonal antibodies raised against rat hepatitis E virus capsid protein: An evaluation of their neutralizing activity in a cell culture system.2016

    • 著者名/発表者名
      Kobayashi T, Takahashi M, Tanggis, Mulyanto, Jirintai S, Nagashima S, Nishizawa T, Okamoto H
    • 雑誌名

      Journal of Virological Methods

      巻: 233 ページ: 78-88

    • DOI

      10.1016/j.jviromet.2016.03.004

    • 査読あり / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Enhanced pregenomic RNA levels and lowered precore mRNA transcription efficiency in a genotype A hepatitis B virus genome with C1766T and T1768A mutations obtained from a fulminant hepatitis patient.2016

    • 著者名/発表者名
      Nishizawa T, Hoshino T, Naganuma A, Kobayashi T, Nagashima S, Takahashi M, Takagi H, Okamoto H
    • 雑誌名

      Journal of General Virology

      巻: 97 ページ: 2643-2656

    • DOI

      10.1099/jgv.0.000566

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Analysis of adaptive mutations selected during the consecutive passages of hepatitis E virus produced from an infectious cDNA clone.2016

    • 著者名/発表者名
      Nagashima S, Kobayashi T, Tanaka T, Tanggis, Jirintai S, Takahashi M, Nishizawa T, Okamoto H
    • 雑誌名

      Virus Research

      巻: 223 ページ: 170-180

    • DOI

      10.1016/j.virusres.2016.07.011

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Production of monoclonal antibodies against the ORF3 protein of rat hepatitis E virus (HEV) and demonstration of the incorporation of the ORF3 protein into enveloped rat HEV particles.2016

    • 著者名/発表者名
      Takahashi M, Kobayashi T, Tanggis, Jirintai S, Mulyanto, Nagashima S, Nishizawa T, Kunita S, Okamoto H
    • 雑誌名

      Archives of Virology

      巻: 161 ページ: 3391-3404

    • DOI

      10.1007/s00705-016-3047-9

    • 査読あり / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [学会発表] Development of a plasmid-based reverse genetics system for hepatitis E virus2016

    • 著者名/発表者名
      小林 富成、長嶋 茂雄、西澤 勉、唐 吉思、高橋 雅春、岡本 宏明
    • 学会等名
      第64回日本ウイルス学会学術集会
    • 発表場所
      北海道 札幌市 札幌コンベンションセンター
    • 年月日
      2016-11-23 – 2016-11-25

URL: 

公開日: 2018-01-16  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi