研究実績の概要 |
HEVのゲノムRNAの複製機構は未だよく分かっていない。そこで本研究では、細胞内におけるHEVゲノムRNAの複製機構を明らかとするために、従来のリバースジェネティクス法で用いるcDNA由来の全長RNAだけではなく、細胞内でゲノムRNAのみが複製するHEVレプリコンの構築を検討した。HEV感染性cDNAクローン由来のRNAをPLC/PRF/5細胞(肝癌細胞)に導入すると、HEV粒子が得られる。そこで、全長のゲノムRNAからORF2の領域に、レポーター遺伝子を組み込こんだHEVレプリコンを構築した。そのcDNAに由来するRNAを試験管内で合成したレプリコンRNAをPLC/PRF/5細胞に導入し、2日毎に培養上清の回収と培地の交換を行い10日間培養した。細胞内でレプリコンRNAが増殖しているかどうかを確認するために、細胞内からRNAを抽出し、複製中間体であるdsRNAをノーザンブロッティング法で検出すると、従来の全長ゲノムRNAを導入した場合と同等の効率で複製していることが分かった。また、ゲノムRNAの複製産物であるsubgenomic RNAから翻訳されるORF3タンパク質も同様の発現効率であることが示された。 また、感染性cDNAクローン由来のHEV粒子をPLC/PRF細胞に感染させて継代培養を10回繰り返した結果、ウイルスの増殖効率が100倍に上がった。このゲノムの全塩基配列を解析すると、ORF1領域内で6つの塩基配列が変異し、そのうちの2つはアミノ酸変異を伴うものであった。6つの変異の中で4つ(C1213T, T2557C, T2808C, A5054G)が増殖効率の上昇に関与していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H28年度の研究目的は①HEVレプリコンの構築と細胞内での複製複合体の局在の解析である。HEVレプリコンの構築は研究実績の概要に記したように、細胞内でレプリコンRNAの増殖を確認することができた。さらに、ゲノムRNAの複製の指標であるdsRNAをノーザンブロッティング法で、ORF3タンパク質をウエスタンブロッティング法で検出することができた。しかし、ウエスタンブロッティング法及び免疫抗体染色法で解析したがレポータータンパク質を検出することができず、発現量が十分でなかったことが推測された。高発現がえられるよう、検討中である。 感染性cDNAクローン由来のHEVを継代培養することで、ウイルスの増殖効率が100倍になった。塩基配列を解析すると、ORF1領域の6つの塩基(C1213T, T2557C, T2808C, C3118T, C4435T, A5054G)が変異していることが確認され、そのうちの2つ(T2808CはValからAla、A5045GはIleからVal)はアミノ酸の変異を伴っていたが、アミノ酸変異を伴わない変異であっても高い増殖効率に関与していることを明らかにすることができた。
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