研究実績の概要 |
本研究では、細胞内におけるHEVゲノムRNAの複製機構を明らかとするために、従来のリバースジェネティクス法で用いるcDNA由来の全長RNAだけではなく、細胞内でゲノムRNAのみが複製するHEVレプリコンの構築を検討した。さらに、全長のゲノムRNAからORF2の領域に、レポーター遺伝子を組み込こんだHEVレプリコンを構築した。試験管内で合成したレプリコンRNAをPLC/PRF/5細胞に導入し、レプリコンRNAの増殖を解析したが、レポーター蛋白質(eGFP)を検出することができなかった。そこで、レポーター蛋白質をより蛍光強度が強いAcGFPやmOrangeに変更し、蛍光発色を解析したが、レポーター蛋白質を検出することができなかった。しかし、細胞内のレプリコンRNAの増殖をノーザンブロッティング法で解析すると、複製中間体であるdsRNAを検出することができ、ゲノムRNAの複製産物であるsubgenomic RNAから翻訳されるORF3蛋白質も同様の発現効率であることが示された。この結果、レポーター蛋白質の蛍光発色を検出するまでの効率はないものの、細胞内でレプリコンRNAを複製させることができ、ゲノムRNAの複製機構を解析することが可能であることが示唆された。 また、ヒトHEVのORF3にはPSAPモチーフといわれるウイルス粒子の放出に重要なアミノ酸配列が存在するが、ラットHEVにはPSAPモチーフは存在していなかった。そこでラットHEVのORF3のプロリンリッチの領域に着目し、93、96、98番目のプロリンをそれぞれロイシンに置換し、ラットHEVの増殖効率を解析した。93、96番目のプロリンを置換した変異体はウイルスの増殖効率が1/100-1,000に減少し、ウイルスが細胞から放出される際に付加される細胞由来の膜成分も減少していた。このことから、93、96番目のプロリンはウイルスの放出に関与していることが明らかとなった。
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