B型肝炎ウイルスの感染許容能に関わる宿主因子の同定と機能解析

2018 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 16K19145
• 研究機関: 国立研究開発法人理化学研究所
• 研究代表者: 九十田 千子 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 研究員 (20710263)
• 研究期間 (年度): 2016-04-01 – 2019-03-31
• キーワード: B型肝炎 / B型肝炎ウイルス / 受容体 / NTCP

研究実績の概要

トランスクリプトーム解析によりB型肝炎ウイルス（HBV）感染許容性/非許容性細胞で遺伝子発現プロファイルの異なる宿主因子を選抜し、HBV感染許容性細胞で発現の高い宿主因子を選抜した。さらにこれらの因子に対するsiRNAを用いてHBV感染感受性を制御する宿主因子をスクリーニングした結果、HBV吸着/侵入/核移行に影響を与える因子を同定した。これらの因子に関してHBV吸着過程への影響をpreS1-probeを用いて評価した結果１つの因子をノックダウンした細胞でHBV吸着過程が阻害されることが示され、またHBV感染受容体NTCPの胆汁酸トランスポーター活性も阻害されることが示唆された。また１つの因子をノックダウンした細胞ではHBV吸着過程およびNTCPトランスポーター活性は阻害されないことが示された。HBV吸着過程に影響を与えた因子に関してさらにその制御メカニズムを解析した結果、この因子をノックダウンした細胞では細胞表面のNTCP量、細胞内のNTCPタンパク質量およびmRNA量が減少していることが示され、この因子はNTCPを発現レベルで制御することが示唆された。またHBVの吸着およびNTCP活性に影響を与えなかった因子に関してその制御メカニズムを解析した結果、この因子をノックダウンした細胞ではNTCPの総タンパク質量に変化はないが細胞膜上のタンパク質量が増加していた。またこの因子をノックダウンした細胞ではHBVの細胞内への侵入過程が阻害され、HBVと共に観察されるNTCPの内在化も阻害されることが示された。同様の現象はエンドソームと細胞膜間のタンパク質輸送を制御する因子をノックダウンした場合にも観察されたため、同定した因子はNTCPの細胞膜―細胞質間の輸送を制御に関与することが示唆された。

研究成果

• [雑誌論文] Concept of Viral Inhibitors via NTCP. (2019)
  • 著者名/発表者名: 1)Tsukuda S, Fukano K, Watashi K, Wakita T.
  • 雑誌名: Semin Liver Dis. 巻: 39 ページ: 78-95
  • DOI: 10.1055/s-0038-1676804
  • 査読あり
• [雑誌論文] A Single Adaptive Mutation in Sodium Taurocholate Cotransporting Polypeptide Induced by Hepadnaviruses Determines Virus Species Specificity. (2018)
  • 著者名/発表者名: Takeuchi JS, Fukano K, Iwamoto M, Tsukuda S, Suzuki R, Aizaki H, Muramatsu M, Wakita T, Sureau C, Watashi K.
  • 雑誌名: J Virol 巻: 93 ページ: 04132-18
  • DOI: 10.1128/JVI.01432-18
  • 査読あり
• [雑誌論文] Troglitazone impedes the oligomerization of sodium taurocholate cotransporting polypeptide and entry of hepatitis B virus into hepatocytes. (2018)
  • 著者名/発表者名: Fukano K, Tsukuda S, Oshima M, Suzuki R, Aizaki H, Ohki M, Park SY, Muramatsu M, Wakita T, Sureau C, Ogasawara Y, Watashi K.
  • 雑誌名: Front Microbiol. 巻: 8 ページ: 3257
  • DOI: 10.3389/fmicb.2018.03257
  • 査読あり
• [雑誌論文] A new strategy to identify hepatitis B virus entry inhibitors by AlphaScreen technology targeting the envelope-receptor interaction. (2018)
  • 著者名/発表者名: Saso W, Tsukuda S, Ohashi H, Fukano K, Morishita R, Matsunaga S, Ohki M, Ryo A, Park SY, Suzuki R, Aizaki H, Muramatsu M, Sureau C, Wakita T, Matano T, Watashi K.
  • 雑誌名: Biochem Biophys Res Commun. 巻: 501 ページ: 374-379
  • DOI: 10.1016/j.bbrc.2018.04.187
  • 査読あり
• [雑誌論文] Chemical array system, a platform to identify novel hepatitis B virus entry inhibitors targeting sodium taurocholate cotransporting polypeptide. (2018)
  • 著者名/発表者名: Kaneko M, Futamura Y, Tsukuda S, Kondoh Y, Sekine T, Hirano H, Fukano K, Ohashi H, Saso W, Morishita R, Matsunaga S, Kawai F, Ryo A, Park SY, Suzuki R, Aizaki H, Ohtani N, Sureau C, Wakita T, Osada H, Watashi K.
  • 雑誌名: Sci Rep 巻: 8 ページ: 2769
  • DOI: 10.1038/s41598-018-20987-w.
  • 査読あり
• [学会発表] Oligomerization of NTCP induces hepatitis B virus internalization, (2018)
  • 著者名/発表者名: Kento Fukano, Senko Tsukuda, Mio Ohki, Sam-Yong Park, Ryosuke Suzuki, Hideki Aizaki, Masamichi Muramatsu, Takaji Wakita, Yuki Ogasawara, Koichi Watashi,
  • 学会等名: International HBV Meeting
  • 国際学会