研究課題/領域番号 |
16K19146
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
加藤 大志 国立感染症研究所, ウイルス第三部, 研究員 (80711712)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ムンプスウイルス / ポリメラーゼ / Hsp90 |
研究実績の概要 |
パラミクソウイルスには呼吸器感染を引き起こすウイルスと全身感染を引き起こすウイルスが含まれるが、どちらも上皮細胞を標的とする。またパラミクソウイルスが全身感染を成立させるためには上皮組織を突破し体内に侵入する必要がある。そこで、本研究はパラミクソウイルスの極性上皮細胞における増殖機構および上皮組織突破機構を明らかにすることを目的に研究を進めている。 まずパラミクソウイルスの内ムンプスウイルスを用いて、極性上皮細胞における増殖に必要な宿主タンパク質の探索およびその分子機構の解析を行った。今年度はシャペロンタンパク質であるHeat shock protein (Hsp90)の役割について詳細に検討した。その結果、Hsp90はムンプスウイルスのLタンパク質と相互作用し、Lタンパク質とPタンパク質からなるポリメラーゼ複合体の形成を促進することで、ウイルスRNA複製および増殖に重要な役割を持つことが明らかになった。またHsp90はムンプスウイルスだけでなく、麻疹ウイルス感染についても同様な役割を果たしており、パラミクソウイルスの増殖に必要な共通因子であると考えられた。しかしながら、Hsp90は上皮特異的な分子ではないため、今後は上皮細胞における増殖に特に重要な因子について検討を進める予定である。また、上皮組織突破機構の解析のために、in vitroの共培養モデルの確立を目指しているが、まだ分子機構を解析するには不十分であり、来年度への継続課題となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度はムンプスウイルスの増殖におけるHsp90の役割について、その分子メカニズムを明らかにし、論文発表に至った。しかしながら、Hsp90はムンプスウイルスを含むパラミクソウイルスの増殖に重要な因子であるが、本研究課題のテーマである上皮細胞に限ったものではないこと、また計画しているin vitroの共培養モデルの確立も遅れていることから、今年度の目標達成には十分な成果ではなく、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き極性上皮細胞におけるパラミクソウイルスの増殖に重要な因子の探索とその分子メカニズムの解析を継続する。また遅れているin vitroの共培養モデルについては、早急に確立し、パラミクソウイルスの上皮突破機構の解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画通りに進まなかった研究があったため、一部予定していた研究が実施できなかった。その分の研究費については次年度に繰り越して使用する。また年度末納品等にかかる支払いが平成29年4月1日以降となったため、一部支出分については次年度の実支出額に計上予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
繰越分のための遅れている研究計画については早急に実施する予定である。
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