研究課題/領域番号 |
16K19151
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
森田 大輔 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 助教 (40706173)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | MHCクラス1 / リポペプチド / Nef / ミリスチン酸修飾 |
研究実績の概要 |
蛋白抗原(ペプチド)を特異的T細胞へと提示する古典的なMHCクラス1分子とは対照的に、脂質化を受けたペプチド抗原である「リポペプチド」を結合し、特異的なT細胞抗原受容体を発現した細胞傷害性T細胞へと提示する新しいタイプのMHCクラス1分子群(LP1分子)が存在する。我々は、サルエイズモデルを用いた詳細な免疫解析からリポペプチド特異的なT細胞応答を先駆けて発見し、その拘束因子として古典的なサルMHCクラス1分子に分類されるMamu-B*098を同定した。高解像度X線結晶構造解析の結果から、Mamu-B*098はMHCクラス1分子でありながら、リポペプチドの結合に最適化された、非常にユニークな抗原結合溝を有していることを見出した(Morita et al. Nature Communications 7:10356, 2016)。
初年度はサルLP1分子の構造解析から得られた基礎データをベースとして「リポペプチドを提示する、新しいヒトMHCクラス1分子群の同定」に向けて、候補MHCクラス1分子の絞り込みを行った。具体的には、サルLP1のリポペプチド結合にとって重要なアミノ酸群(45番目のメチオニンなど)に着目し、European Bioinformatics Instituteに登録されている約1万種類のヒトMHCクラス1分子の中から候補となる分子群の抽出を行った。この際、注目する各アミノ酸の疎水性度と嵩高さに関して、独自のスコアリングを行うことで数値化を行い、上位にランキングされる20種のMHCクラス1分子群を有力候補分子として選抜した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最大の課題は「ヒトリポペプチド提示分子の同定」であり、同定後に予定している機能解析(X線結晶構造解析とトランスジェニックマウスを用いた免疫解析)については、サルLP1分子をモデルとして概ね実験系は確立されている。また、候補分子におけるリポペプチド結合能の評価についても既に実験系を確立していることから、今後の研究はシームレスに進行する可能性が高い。従って、研究計画の達成は十分に可能であり、現在までの進捗状況としては、おおむね順調に進展している、と判断される。
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今後の研究の推進方策 |
まず、初年度の解析から同定されたヒトLP1分子の候補分子群についてリコンビナントタンパク質を調製し、リポペプチド結合試験によってLP1分子を確定する。リポペプチド結合能が高い分子については、X線結晶構造解析によってその結合様式を明らかにする(一連の実験系は確立済み、Morita et al. Nat. Communi 2016参照)。 さらに、ヒトLP1を同定出来次第、トランスジェニックマウスの樹立へと進み、本研究の集大成として、リポペプチド特異的T細胞群の時空間的振る舞いについてLP1テトラマーを用いた詳細な検証を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた必要額と実際の支出額はほぼ一致したが、消耗品について若干の余剰があったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度については、初年度に絞り込んだ候補MHC1クラス分子の人工合成ならびにトランスジェニックマウスの樹立と飼育費用に重点する。また、その他に必要となる細胞培養、生化学試薬消耗品に使用する。
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