研究実績の概要 |
本研究では、自己免疫疾患のひとつである全身性エリテマトーデス(Systemic lupus erythematosus; SLE)のモデルマウス等の動物試料を用いて、自己抗体産生に関わる免疫グロブリン再構成の状況を明らかにし、自己抗体産生機序の解明につなげることを目的とした。 本研究において、SLE自然発症型モデルマウスであるNZB×NZW F1 (NZB/W F1)マウス(以下、SLEモデルマウス)(PNAS, 93, 8563 (1996))の免疫グロブリン遺伝子座特定領域において、BALB/c(以下、野生型マウス)と比較して、遺伝子再構成とその転写に異常があることを明らかにした。 一方我々は、SLEモデルマウスの骨髄B細胞(初期分化過程のB細胞)は、野生型マウスと比べて、正常な分化過程から逸脱している可能性も明らかにした。B細胞成熟分化過程においては、骨芽細胞や神経細胞等、多種の細胞の分化調節因子として働く遺伝子に着目し、SLEモデルマウス骨髄B細胞においても、野生型マウスと比べて分化調節因子の発現量が低下していることを確認した。さらにごく最近、B 細胞特異的に分化調節因子をノックアウトするコンディショナルノックアウトマウス(cKOマウス)の作製にも成功し、分化調節因子の cKOマウスで免疫グロブリン遺伝子の再構成に偏り(異常)が生じていることをも確認した。 今後、SLEモデルマウス等を用いて明らかとなった現象について、ヒトSLE等自己免疫臨床検体(末梢血等)を用いて検討することにより、SLEをはじめとする自己免疫疾患の診断応用への可能性を探る。
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