研究の目的:自己免疫疾患とは、自身の蛋白質(抗原)に対して免疫反応が活性化された結果、抗原を含む臓器の炎症や機能不全を起こす疾患である。現行の治療法(免疫抑制療法)は自己免疫に加えて感染免疫も抑制する為、易感染性という重篤な治療の副作用が臨床上問題となっている。申請者らはこれまで感染免疫に影響を与えずに自己免疫異常のみを選択的に抑制する治療法(抗原選択的免疫抑制療法)を複数のモデルマウスを使用し確立してきた。一方、動脈硬化は血管内皮の抗原に対する免疫反応が活性化することで起こると言われている。本研究では動脈硬化モデルマウスを用いて動脈硬化の主な原因抗原を探索し、血管内皮抗原に伴う免疫異常のみを選択的に抑制する治療法の確立および基盤の創生を目的とする。 実施内容:血管内皮抗原(HSP65)により誘導される動脈硬化モデルマウスにおいて、 B細胞除去療法に加えて、HSP65を併用することで、抗原特異的なリンパ球のの増殖能やサイトカイン(MCP-1やIL-6、TNFα、IL-10など)産生能が低下した結果、動脈硬化における免疫反応が抑制され、結果、動脈硬化が抑制されることを発見した。そのメカニズムとして、HSP65抗原特異的な制御性T細胞と制御性B細胞が体内で誘導されていて、それらの細胞はマクロファージが産生するTGF-bによる体内に誘導されることが明らかになった。なお、B細胞除去療法単独あるいはHSP65単独投与では効果を認めなかった。
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