研究課題
平成28年度は、430名の未治療の日本人HIV-1慢性感染者集団(本コホート)のHIV-1 Gag, Pol, Nef領域の共通配列とHLAクラスⅠ関連多型(HLA-AP)のうちウイルスの免疫逃避と考えられる多型(Adapted)(Chikata et al. J Virol, 2014)および/もしくは我々のグループが過去に逃避変異として報告した変異の情報を元に、各個人のウイルス配列とHLA遺伝子型の情報からエピトープの推定を目的としたHLArestrictor(Erup Larsen et at. Immunogenetics, 2011)を用いて、変異型エピトープおよびネオエピトープを推定し、それらエピトープを認識するCTLの誘導の有無を検討した。探索したHLAに提示されるエピトープのうち、Strong Binderとして推定されたエピトープの約60-100%が新規エピトープであった。またWeakもしくはCombined Binderとして推定されたエピトープまで含めると、Adapted HLA-APや逃避変異を含むエピトープが多数推定された。さらに、野生型と変異型のウイルス配列がmixtureとして有意に認められた箇所では、野生型と変異型エピトープの両方が推定された。一方で、代表者らが最近同定したHLA-C*12:02 拘束性のネオエピトープについては、近傍のエピトープは推定されたが同定したエピトープは推定された。これらの結果は、HLA-APもしくは逃避変異の箇所を指標にエピトープの推定が可能であること、さらに、実際には本コホートのHLAに提示されるエピトープには多数の未報告の新規エピトープや変異エピトープが存在していることを示唆しており、未同定のCTL応答がHIV-1の増殖制御に寄与している可能性が考えられる。
3: やや遅れている
平成28年度に計画していた、本コホートにおける推定エピトープを認識するCTLの誘導の有無の検討について、推定エピトープの絞り込みに時間を要し、一部のエピトープについてしか着手できていないため。
推定エピトープの取り残しの可能性を減らすため、HLArestrictorで推定したエピトープについて、他の推定プログラム(具体的にはエピトープの切り出し部位を推定するプログラム、HLAの構造を元にエピトープを推定するプログラムや実際に細胞から溶出されるペプチドを質量分析器で検出したデータを元にエピトープを推定するプログラムなど)を併用するなどして再検証する。またペプチドを合成する際に、推定エピトープに近傍の配列を加えた配列を合成するなど工夫する。
平成28年度に計画していた、推定エピトープを認識するCTLの誘導の検討が一部にとどまり、実験に必要なペプチドの合成にかかる費用を使用できなかったため。
平成29年度は、まず推定エピトープの再検証を終了し、合成するペプチドを決定する。 次年度使用額の大部分はこのペプチドの合成費用とする。 平成29年度分として請求した助成金については、当初計画した平成29年度の研究実施計画に従って使用する。
すべて 2016 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 6件) 備考 (1件)
Cell Reports
巻: 17 ページ: 2210-2220
10.1016/j.celrep.2016.10.075
巻: 15 ページ: 2279-2291
10.1016/j.celrep.2016.05.017
http://www.caids.kumamoto-u.ac.jp/data/takiguchi/viral/gyouseki/gyousekitop.htm