研究課題
我々は、T細胞特異的にRap1 を欠損したconditional knockoutマウス(Rap1 KOマウス)を作製したところ、生後数週間で大腸炎及び高度異型腫瘍を自然発症し、速やかに大腸がんへ進展することがわかった。本年度はこの大腸炎自然発症モデルマウスを用いて、γδ T細胞の大腸炎発症における役割について解析を行った。近年IBDにγδ T細胞の関与を示した報告が数多くあるが、大腸炎の促進または抑制のどちらに働くのかは不明な点が多く、既存のDSSモデルでは大腸炎発症の初期においてγδ T細胞がどのように機能するのかはわかっていなかった。Rap1 KOマウスではγδ T細胞が腸管関連組織で顕著に増加していたことから、大腸炎の発症にγδ T細胞が関与している可能性が考えられた。そこで、γδ T細胞が、大腸炎の促進または抑制のどちらに働いているのかを検討するため、Rap1 KOマウスとTCRγ KOマウスを掛け合わせ、全身でγδ T細胞を欠損させたdouble knockoutマウス(DKOマウス)を作製した。DKOマウスとRap1 KOマウスの体重と炎症スコアを比較したところ、DKOマウスでは大腸炎の発症時期が遅れたことから、γδ T細胞は大腸炎の発症初期の悪化に関与している可能性が示唆された。続いて増加していたγδ T細胞のサブセットを、フローサイトメトリーを用いて解析した結果、腸管膜リンパ節ではVγ4が増加し、大腸粘膜固有層ではVγ6が減少していた。この二つのサブセットはIL-17Aを産生するサブセットとして知られている。そこで、Vγ4とVγ6のIL-17A産生細胞の割合に変化が生じている可能性を検討した。その結果、どちらの組織においても、Rap1 KOマウスのVγ4とVγ6サブセット中のIL-17A産生細胞の割合が増加していることがわかった。
2: おおむね順調に進展している
本年度は大腸炎自然発症モデルマウスを用いて、γδ T細胞の大腸炎発症における役割について解析を行った。その結果、γδ T細胞は大腸炎の発症初期において促進的に働く可能性が示唆された。また、増加したγδ T細胞のサブセット解析を行ったところ、腸管関連組織におけるVγ4、Vγ6の割合が変化しており、それぞれのサブセット中のIL-17A産生細胞の割合は増加していることが明らかとなった。今後はγδ T細胞とT細胞との関係性について検討していくことで、IBDの発症原因・病態形成機構の解明へとつながっていくことが期待される。
次年度はRap1欠損によって大腸炎を誘導する病原性T細胞が生成するメカニズムとして、自然リンパ球(ILC3)が関与する可能性を検討する。また、Rap1欠損T細胞の抗原受容体からのシグナル伝達経路及びRORγt、GATA3、T-betなどの転写因子誘導への影響を合わせて検討していく。
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Immunity, inflammation and disease
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10.1002/iid3.213