本研究室で作製したT細胞特異的Rap1欠損マウスは、生後数週間で高度異型腫瘍を伴う激しい大腸炎を発症することがわかっている。本年度は、この大腸炎自然発症モデルを用いて、ILC3の大腸炎における役割について検討を行った。 近年、ILC3は腸管粘膜固有層において腸内細菌を取り込み、腸管リンパ節において腸内細菌反応性T細胞へMHC classⅡを介して抗原提示することでアポトーシスを誘導し、腸内細菌に対する免疫寛容を誘導していることが報告されている。大腸炎モデルマウスでは、CD4+ ILC3でRap1が欠損していたことから、腸管リンパ節並びに大腸粘膜固有層においてCD4+ ILC3の細胞数に影響が及ぼされている可能性を、フローサイトメトリーを用いて検討した。その結果、大腸炎発症後には腸管リンパ節において細胞数が減少していたが、発症前の4週令においては野生型とほとんど差は認められなかった。また、MHC classⅡの発現についても検討したが、Rap1欠損による影響は認められなかった。以上の結果より、CD4+ ILC3の腸管粘膜固有層から腸管リンパ節への移動にRap1は関与していないことが判明した。ILC3はIL-22を産生することで腸管上皮細胞からの抗菌タンパクの発現を高めることで粘膜感染菌の排除に重要な役割を果たしていることが報告されている。そこで、Rap1の欠損により大腸粘膜固有層に存在するCD4+ ILC3のIL-22の産生量を検討したが、野生型との間に差は認められなかった。
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