Th17細胞は細菌・真菌に対する生体防御および腸の恒常性に重要な役割を果たすが、自己免疫応答の誘導にも関与する。このような多様な機能にはTh17細胞の不均一性および可塑性が関与するようである。例えば、病原性Th17細胞は自己免疫応答を誘導するが、小腸に局在する非病原性Th17細胞は、腸の恒常性維持に関わることが示唆されている。しかし、Th17細胞の機能的多様性および可塑性を制御する分子メカニズムは十分に分かっていない。 そこで、Th17細胞の機能および分化の制御メカニズムを理解することを目的として、まずin vitroおよび実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を発症したマウスより単離したTh17細胞のマイクロアレイ解析を行った。その結果、ES細胞特異的エピジェネティック制御因子ZFP57が生体内で産生されるTh17細胞において高く発現していることを見出した。一方、in vitroで誘導した各種ヘルパーT細胞およびin vivoで誘導したTh1細胞などではZFP57の発現は、検出されなかった。ZFP57のTh17細胞における機能を明らかにするために、T細胞特異的ZFP57欠損マウスを作製した。このマウスにおけるT細胞の発生および腸局在Th17細胞の分化は正常に認められた。さらに、野生型マウスと同様のEAEに対する感受性を示した。EAEマウスにおけるT細胞の挙動を調べたところ、ZFP57欠損マウスのリンパ節および脳脊髄におけるTh17細胞の蓄積は野生型マウスと比べて同程度であった。今後は、Th17細胞におけるZFP57の機能を明らかにするために、他の自己免疫疾患モデルを用いて解析を行う予定である。
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