研究課題/領域番号 |
16K19174
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
沢本 圭悟 札幌医科大学, 医学部, 助教 (10597529)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 救急救命士 / 特定行為 / 具体的指示 / 包括的指示 / フィンランド |
研究実績の概要 |
平成29年度は主に、①特定行為における具体的指示の内容調査の解析、②具体的指示要請時の通話時間の調査、③フィンランド共和国ヘルシンキ市におけるメディカルコントロール(MC)体制の視察、の3つに取り組んだ。 ①については、研究協力者である、当大学がMCを管轄する9消防本部(江別市消防本部、北広島市消防本部、千歳市消防本部、恵庭市消防本部、石狩北部地区消防事務組合消防本部、小樽市消防本部、北後志消防組合消防本部、羊蹄山ろく消防組合消防本部、岩内・寿都地方消防組合消防本部)に関して作成した事後検証データベースを用いて集計と解析を実施した。心肺停止症例に対する、「声門上デバイスによる器具気道確保」、「静脈路確保」、「初回のアドレナリン投与」、の三項目については、救急救命士の具体的要請に対してMC指示医師は99%以上の割合で同意するのみであったことが示された。 ②については、特定行為に対してどれくらいの時間が電話通話によって要しているのか調査を実施した。各消防本部から電話会社に依頼して携帯電話の通話時間記録を入手し、事後検証票を用いて一つ一つの特定行為と通話時間を照合していった。次年度の研究ではその結果を解析する。 ③については、ヘルシンキ市消防本部に赴き、MC医師による講義を受けるとともに、救急車の同乗実習を行った。救急救命士の教育制度が日本とは大きく異なっているため、救急救命処置、特に包括的指示下で実施可能な処置が非常に多かった。医師、救急救命士、救急隊員、のそれぞれとディスカッションを通してお互いの病院前救急医療体制を理解することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定では海外視察は平成28年度と平成29年度の2回で終了であったが、平成29年度にフィンランドを視察したのみで、アメリカでの視察を終えていないため。その他については順調に進められている。
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今後の研究の推進方策 |
研究1の「特定行為における具体的指示の内容調査」については、引き続き調査を継続し、MC指示電話の通話時間の解析を行う。 研究2の「欧米における包括指示プロトコールの調査」については、平成30年度にアメリカのUniversity of Massachusetts Medical Schoolの視察を行う。アメリカ、フィンランド、日本、の3つのプロトコールを比較し、救命率向上に向けた課題の抽出を行う。 研究3の「包括指示を想定したプロトコールの策定」については、現状の具体的指示を要する救急救命処置の包括指示化の妥当性を検討し、包括指示化が可能と思われる処置に関してのプロトコルを試験的に策定する。 研究4の「プロトコールの検証」については、研究協力者である9消防本部に依頼して、新プロトコルを用いたシミュレーションを実施し、撮影された動画を解析して時間短縮効果を示すとともに、新たに抽出されてくるであろう課題について考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたアメリカでの現地調査を延期し、その調査旅費が未使用であったため、次年度使用額が生じた。平成30年度にアメリカでの現地調査を行い、その旅費に充てる予定である。
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