研究課題/領域番号 |
16K19185
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
外山 政明 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 特任助教 (80747600)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 成人T細胞白血病 / マイクロアレイ / 標的分子 |
研究実績の概要 |
ヒトレトロウイルスであるHuman T-lymphotropic virus type 1 (HTLV-1)が原因で起こる成人T細胞白血病(ATL)は,一旦発症すると致死的な造血器悪性腫瘍であり,現在,ATLに対する有効な治療法は確立していない。本研究は,選択的な抗ATL効果を有する低分子化合物TMNAAの作用機序(標的分子)を解明することを目的としている。 平成28年度は,ATL細胞株のS1T細胞及びHTLV-1感染T細胞株のMT-2細胞,その比較対象としてHTLV-1非感染T細胞株のMOLT-4細胞を用いて,TMNAA処理及び未処理の細胞をマイクロアレイを用いて網羅的な遺伝子発現解析を行った。その結果,TMNAA処理によりS1T細胞及びMT-2細胞に共通して発現上昇または発現低下している遺伝子を複数同定した。同定された遺伝子は,主に転写因子として働くことが知られている遺伝子で,TMNAAは転写因子に作用することで抗ATL効果を発揮することが示唆された。また,これらの遺伝子はATL患者においても発現が確認されている遺伝子であった。一方,MOLT-4細胞においても,これらの遺伝子の発現の増減は見られたが,その下流遺伝子の発現がS1T細胞及びMT-2細胞と異なっていたため関係性はほとんどないと推測された。 今後,同定された遺伝子について,他のATL細胞株及びHTLV-1非感染細胞株も含めて,リアルタイムRT-PCR法,ウェスタンブロット法などを用いて細胞レベルでの解析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画通り,平成28年度は選択的な抗ATL効果を有するTMNAAの作用機序の解明するために,ATL 細胞株のS1T細胞及びHTLV-1感染T細胞株のMT-2細胞,その比較対象としてHTLV-1非感染T細胞株のMOLT-4細胞をTMNAA処理し,マイクロアレイを用いて網羅的な遺伝子発現の解析を行った。その結果,TMNAA処理されたS1T細胞及びMT-2細胞において共通の増減が見られる遺伝子を複数同定することができたため,ほぼ順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,まずS1T細胞及びMT-2細胞を用いて共通して増減が見られた遺伝子についてリアルタイムRT-PCR法,ウェスタンブロット法などを用いて細胞レベルでの解析を行う。その発現が他のATL細胞株及びHTLV-1感染T細胞株においても同様の増減が確認されるか検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたマイクロアレイ解析のための試薬購入費が少なく済み,また学会参加費,旅費が不要であった。
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次年度使用額の使用計画 |
研究計画に沿って,平成29年度は平成28年度に同定された遺伝子ついての解析に必要なプライマー,抗体などの試薬類及び細胞培養関連試薬の購入に使用する。また,旅費については成果発表や研究に関する情報収集のための学会参加費に使用予定である。
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