研究課題/領域番号 |
16K19186
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
今西 哲 東京医科大学, 医学部, 助教 (50462479)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 薬剤耐性 / アザシチジン / テリフルノミド |
研究実績の概要 |
平成28年度には、テリフルノミドによるアザシチジン耐性の解除と予防が可能であるかを、培養細胞を用いた実験によって検討した。予防可能性については、当初計画では29年度に実施する予定であったが、実験に時間がかかることを考慮し前倒しして実施した。適切な条件の決定に時間を要したが、培養細胞におけるアザシチジン耐性が、臨床で使用される濃度の1/10程度の濃度のテリフルノミドによって解除されることを見出した。この結果は骨髓異形成症候群よりアザシチジン抵抗性を獲得し、急性骨髄性白血病に進展した患者6名に由来する白血病細胞でも確認できた。この解除には、アザシチジン耐性細胞のピリミジン代謝の特性が関与する可能性を示唆する結果を得ている。また、アザシチジン感受性細胞を約50日間、アザシチジンの存在下で培養すると耐性細胞が出現するが、アザシチジンと共に低濃度のテリフルノミドを添加しておくと、耐性細胞が出現しないことを確認した。これらの結果は、7th JSH international Symposiumや、14th International Symposium on Myelodyplastic Syndroms にて発表を行い、また論文を投稿しリバイス中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では平成28年度には、テリフルノミドによるアザシチジン耐性の解除の可能性の検討と分子機序の解明を実施する予定であったが、薬剤処理、特にテリフルノミドの適切な濃度と時間の検討に時間がかかったため分子機序の詳細な解明には到らなかった。しかし、アザシチジン耐性細胞におけるピリミジン代謝がde novo合成依存的である事や、テリフルノミド処理がピリミジンサルベージの活性化を起こす事を示唆する結果を得ている。また、当初29年度に実施予定であったテリフルノミド処理によるアザシチジン耐性獲得の予防効果の検討は、数ヶ月間に亘って実施しなければならないことを考慮して、前倒しで実施した。その結果、テリフルノミドとの併用が培養白血病細胞株におけるアザシチジン耐性の獲得を強力に予防することを見出した。加えて、アザシチジン耐性の解除の効果を患者由来白血病細胞でも確認できており、当初計画とは変更があったものの全体としては順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後、テリフルノミドによるアザシチジン耐性の解除、予防の分子機序について、ピリミジン代謝に着目して解明する予定である。また、これまでに確認されたテリフルノミド処理の効果は主に細胞のバイアビリティに着目したものであるが、アザシチジンの作用機序とされるDNAメチル化酵素の阻害活性が回復しているのかを分子レベルで検討する。加えて、アザシチジン耐性獲得の予防効果を患者由来細胞を用いて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では、平成28年度にアザシチジン耐性を解除する分子機序の解明を、平成29年度にアザシチジン耐性の予防効果の検討を実施する予定であった。しかし、アザシチジン耐性の予防効果の検討には、アザシチジン感受性細胞を薬剤処理し、耐性細胞の出現が確認されるまで長期間の実験が必要になること、また薬剤処理の濃度検討などにも時間を要する事等を考慮し、平成28年度中にアザシチジン耐性の予防効果の検討を前倒しで実施した。その結果、費用のかかる分子レベルの検討を平成29年度に実施するかたちとなった。また、論文の投稿費用、海外学会への参加費用などが年度末までに確定せず、平成29年度に持ち越しとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度には、テリフルノミドによるアザシチジン耐性の解除の機序および、予防の機序の解明を分子レベルで実施する。これらの実験には、抗体や各種試薬など比較的高額な消耗品が必要である。また、平成29年度にも複数の論文投稿、学会参加を予定しており、本研究の当初目的を達成するうえで必要な金額である。
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