昨年度までの研究でテリフルノミドの併用によって、アザシチジン(AZA)耐性を解除、予防できる可能性を明らかにした。最終年度は、分子機序の解明に取り組んだ。まず、AZA感受性の細胞株U937とHL60、これらに由来するAZA耐性亜株R-U937、R-HL-60のテリフルノミドへの感受性を比較したところ、AZA耐性亜株は親株に比べて高いテリフルノミド感受性を示し、AZA耐性細胞のピリミジン代謝がde novo合成に依存することが示唆された。さらにピリミジンサルベージ経路に特異的な基質で、クリックケミストリーによる検出が可能なエチニルウリジンをテリフルノミドと共にAZA耐性亜株に添加したところ、テリフルノミドを処理しない場合に比べてエチニルウリジン陽性細胞が顕著に増加し、テリフルノミド処理がピリミジンサルベージ経路の活性化を促す事が確認された。以上の結果から、テリフルノミドによるAZA耐性の解除には、ピリミジンサルベージ経路によるAZAの代謝的活性化の回復が関与する可能性が示唆された。さらに、AZA耐性亜株においてテリフルノミドの存在下でAZAがDNAメチル基転移酵素(DNMT)の阻害剤として作用しているのかを検討するためDNMT1、DNMT3Aのタンパク質量の検討を行った。AZA単独またはテリフルノミド単独で処理したAZA耐性亜株では、未処理のAZA耐性亜株と同等のDNMT1、DNMT3Aが検出されたが、AZAとテリフルノミドの併用処理をしたAZA耐性亜株ではDNMT3Aタンパク質の顕著な減少がみられ、AZAがDNMT阻害剤として作用していることが示唆された。さらに、in vivoの併用の効果を検討すべく、ヌードマウスの皮下への移植を試みた。親株は全てのマウスで腫瘤が形成されたが、AZA耐性亜株の生着率は極めて低く、サンプル不足のため残念ながら解析不能となった。
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