研究課題
これまでの研究により、研究代表者らはクラリスロマイシン(CAM)を初めとするマクロライド抗生剤がオートファジーの阻害作用を持つこと、及び、プロテアソーム阻害剤ボルテゾミブ(BZ)との併用により骨髄腫細胞に対して小胞体ストレス負荷を介した殺細胞増強効果を生じることを明らかにしてきた。(Moriya S. Int J Oncol. 2013, 2015)近年、骨髄間質細胞(骨髄微小環境)と骨髄腫細胞との相互作用が骨髄腫細胞の増殖・生存を促進し、BZへの抵抗性を生じることが報告されている。そこで骨髄微小環境下での本併用療法の有用性を検証するために、骨髄間質細胞株と骨髄腫細胞株の共培養実験系の構築を試みた。共培養系における細胞識別のために、まず、各種骨髄腫細胞株(RPMI8226, IM-9, KMS-12-PE)のEGFP安定発現株を樹立した。骨髄間質細胞株の単層培養上に各MM細胞株を共培養し、BZ添加後のEGFP陽性で示される骨髄腫細胞株の生細胞数をフローサイトメーターにより経時的に測定すると、骨髄腫単独培養系に比べてBZの殺細胞効果の減弱が観察された。しかし、ここにCAMを同時添加することで殺細胞増強効果が認められた。また、CAM単剤ではストローマ細胞株および骨髄腫細胞株への細胞毒性はほとんど認められなかった。この共培養系における殺細胞増強効果はアジスロマイシン等の他のマクロライドの併用添加でも再現された。以上の結果より、骨髄微小環境下でのBZ抵抗性の克服にマクロライド抗生剤が有用であることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
骨髄腫細胞株のEGFP安定発現細胞株を樹立したことにより骨髄間質細胞株と骨髄腫細胞株の共培養系において、薬剤添加時に両者を区分し骨髄腫の殺細胞作用を測定することが可能になった。また、この共培養系においてプロテアソーム阻害剤とマクロライドの併用による骨髄腫細胞株の殺細胞作用の増強が確認できた。現在、共培養系における小胞体ストレス、オートファジーのモニタリングシステムの確立も進行中である。そのため、本研究は「おおむね順調に進展している」と考えられる。
共培養系におけるプロテアソーム阻害剤とマクロライドの併用による骨髄腫細胞株の殺細胞作用の増強効果に関して、オートファジー、小胞体ストレスの更なる解析を行う。具体的には小胞体ストレス関連遺伝子、オートファジー関連遺伝子を蛍光標識やタグにより標識して、共焦点レーザー顕微鏡によるタイムラプス撮影やイムノブロッティング法、リアルタイムPCR法により解析する。また、質量分析法やマイクロアレイ法によりマクロライドのオートファジー阻害機構の解明も進める方針である。
端数分のため、必要試薬・抗体・消耗品の購入費に満たなかったため。
次年度と合算し、試薬・抗体・消耗品の購入費とする。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 6件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 1件) 備考 (2件)
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