研究課題/領域番号 |
16K19187
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
森谷 昇太 東京医科大学, 医学部, 助教 (30634935)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 骨髄腫 / プロテアソーム / 小胞体ストレス / オートファジー / bortezomib / ボルテゾミブ / 微小環境 / マクロライド |
研究実績の概要 |
プロテアソーム阻害剤ボルテゾミブ(BZ)の登場により長期生存を視野に入れた治療が可能となった多発性骨髄腫であるが、依然完治不能である原因の一つに微小環境(癌細胞とストローマ細胞の相互作用)誘導性薬剤抵抗(CAM-DR)があり、新規治療法の開発ならびに分子病態の解明が求められている。現在までに研究代表者らは ①プロテアソーム系とオートファジー系のクロストークを明らかにし、②クラリスロマイシンをはじめとする日常臨床で使用されているマクロライドがオートファジー阻害活性を持つことおよび、BZとマクロライドの併用が骨髄腫細胞株に対して小胞体ストレスを介した細胞死を誘導することを明らかにした。また、③アグリソーム(不良タンパク凝集体)形成阻害能を持つSAHA等をさらに併用することによる「細胞内タンパク分解系の包括的制御」が、従来の認識を遥かに超えて強力な癌細胞死を誘導することを示した。(Moriya S, et al. Int J Oncol. 2011, 2015.)
当該年度においては、蛍光タンパク標識骨髄腫・ストローマ細胞株を樹立し、従来難しいとされていた骨髄腫・ストローマ細胞株を直接接着させた共培養系においての両細胞の区別を可能とし、これまでに報告してきた薬剤併用による殺細胞増強作用がストローマ存在下でも有効であり、CAM-DR改善を示唆する結果を得た。
また、従来のオートファジーと癌の研究は癌細胞側に着目しているものが殆どであり、微小環境およびCAM-DRにおけるオートファジーの役割については全く解明されていなかったが、本研究ではmCherry-EGFP-LC3等のオートファジー・小胞体ストレス関連遺伝子の導入やCRISPER/Cas9法によるノックアウト細胞株の樹立により、CAM-DRにおけるオートファジーの多発性骨髄腫分子病態での役割の解明も進行しつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
蛍光タンパク標識骨髄腫・ストローマ細胞株を樹立し、従来難しいとされていた骨髄腫・ストローマ細胞株を直接接着させた共培養系においての両細胞の区別を可能とし、これまでに報告してきた薬剤併用による殺細胞増強作用がストローマ存在下でも有効であることを示唆する結果を得た。本研究では「臨床応用への実現性」に重点を置いており、使用している薬剤はすべて既存の臨床薬である。特にマクロライド系抗生剤は臨床でのデータが十分蓄積されており安全性も高い。この組み合わせでCAM-DR改善を示唆する結果を得たことは臨床応用の可能性を含めて、今後の研究進展が大きく期待できると思われる。
また、微小環境で生じるオートファジー・小胞体ストレス関連遺伝子のモニタリングも進行しつつあることから、CAM-DRにおけるオートファジーの役割の解明も期待され、「本研究はおおむね順調に進展している」と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き細胞内タンパク分解系を標的とした多発性骨髄腫治療法の開発を目指す。
特に微小環境で生じるオートファジー・小胞体ストレス関連遺伝子のモニタリングを行い、CAM-DRにおけるオートファジーの役割の解明に重点を置く予定である。
また、骨髄腫疾患モデルマウスを用いたin vivo効果を検証することにより本療法の実臨床試験に向けた基盤形成を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬・抗体購入費に満たない端数余剰金が生じたため、次年度に繰り越すことが適切と判断した。
端数分は次年度使用分と合算し、試薬・抗体購入費として適切に使用する予定である。
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