研究課題
これまでに、研究代表者はマクロライド抗生剤のオートファジー阻害作用を明らかにし、ボルテゾミブ(BZ)などのプロテアソーム阻害剤との併用による「細胞内タンパク質分解機構の包括的制御」が、骨髄腫細胞株に強力な癌細胞死を誘導することを報告してきた。骨髄腫難治性の原因の一つに微小環境誘導性薬剤抵抗(CAM-DR: Cell adhesion mediated-drug resistance)がある。そこで、CAM-DRに対する本併用投薬法の有効性を検討するために、骨髄腫細胞株と間質細胞株の共培養実験を行ったところ下記の結果を得た。①間質細胞株と骨髄腫株を、セルカルチャーインサートを挟んで接着させ、共培養すると、BZの骨髄腫細胞株に対する殺細胞作用が減弱し、CAM-DRが in vitroでも再現された。②この共培養系にBZを投与した後に、骨髄腫株を分画採取して解析したところ、骨髄腫単独培養群と比較してCHOPなどのpro-apoptoticな小胞体ストレス遺伝子群の発現減弱が認められ、CAM-DRと小胞体ストレス負荷減弱の関連性が示唆された。③この共培養系にBZとマクロライドの併用投与を行うと、共培養系においても骨髄腫株に強力な細胞死誘導作用が認められ、本投薬法のCAM-DRに対する有効性を示唆する結果を得た。④BZとマクロライドの併用により、骨髄腫の小胞体ストレス負荷が一挙に高まり、これと連動して殺細胞効果が誘導されていることが共培養系においても認められた。以上の結果から、細胞内タンパク質分解機構の包括的制御が骨髄腫の小胞体ストレス負荷を増大させ、CAM-DRに対しても有効であり、骨髄腫の治療成績の改善につながることが期待できる。今後はin vivoでの薬理効果の検証を行うと同時に、マクロライドのオートファジー阻害活性の分子基盤解明を進める予定である。
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Oncol Rep.
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10.3892/or.2019.7140
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