研究実績の概要 |
本研究では、Teneurin-4 (Ten-4)が間葉系幹細胞(MSC)に及ぼす影響とその機序を分子レベルで解析し、Ten-4発現量の異なる組織欠損モデルへ移植することによって、Ten-4がMSCの幹細胞能力を反映するサロゲートマーカーとなる可能性を検討することを目的としている。一般的なMSCの分離方法としては、組織から得られる雑多な細胞集団を接着培養し、増殖した細胞を回収するという手法が取られている(以下、「既存分離法」として表記)。しかしながらこの手法では、長期の細胞培養が必要な上、MSC以外の細胞の混入が避けられない。本研究では、より有効性の高い細胞を分離するため、フローサイトメーターを用いて組織中の細胞を選択的に分離する「新鮮純化法」を開発した(PCT国際出願中)。「新鮮純化法」で用いる細胞表面抗原はヒト・マウス・ラット間で共通であり、「新鮮純化」MSCはTen-4を高発現している。この方法によって骨髄MSCを高効率に純化できるということを明らかにしたのは平成28, 29年度の成果である。平成30年度は、骨髄以外にも、皮下脂肪や内臓脂肪、胎盤から得られるMSCも同一の抗体で分離できることを示し、これらの細胞は疾患モデル動物に対して高い免疫抑制効果を持っていることを明らかにした。MSC採取時のドナーへの浸潤性を考慮すると、骨髄よりも皮下脂肪や胎盤などから有効な細胞を得られることが望ましい。将来的な臨床応用を目指す際に、細胞ソースとして脂肪組織や胎盤を活用できる可能性を期待している。
|