研究課題
アディポネクチンはその受容体AdipoRを介して、特に耐糖能と関連した生理活性を発揮すると言われているが、抗動脈硬化因子としての作用がどのように発揮されるかは必ずしも明らかではない。そこで本研究では、動脈硬化の原因分子である酸化LDLに対するアディポネクチンの作用を解析し、その動脈硬化抑制メカニズムを明らかにすることを目的としている。はじめに、ELISAを用いた解析により、アディポネクチンが酸化LDLに結合するかを検討した。酸化LDLあるいはLDLをELISAプレートに固相化し、アディポネクチンとインキュベートした後に、抗アディポネクチン抗体で酸化LDLあるいはLDLに結合したアディポネクチンを検出すると、酸化LDLにより強いアディポネクチンの結合がみられた。そこで、アディポネクチンと酸化LDLの相互作用が、酸化LDL作用に及ぼす影響をin vitroの実験系で検討した。まず、酸化LDLの細胞への取込みに対する影響を検討すると、アディポネクチンは酸化LDL受容体強制発現細胞や、酸化LDL受容体を内在性に発現するヒト培養血管内皮細胞、マクロファージ様に分化させたTHP-1細胞への酸化LDL取込みに対して抑制的に働くことがわかった。次に、酸化LDLが引き起こす細胞応答について検討した結果、アディポネクチン存在下で酸化LDLを細胞に反応させると、酸化LDL単独で反応させた場合に比べて、酸化LDL受容体を介したERKリン酸化や転写因子活性化は抑制された。これらのことから、アディポネクチンが酸化LDL作用を直接阻害する可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度は、アディポネクチンの酸化LDL阻害作用を明らかにすることを目的とし、組換えタンパク質や培養細胞を用いてこれらの分子の相互作用を検討した。その結果、アディポネクチンが酸化LDLに結合し、酸化LDLの血管内皮細胞やマクロファージへの取込み、酸化LDL刺激によって起こる細胞応答を抑制することがわかってきた。このような結果から、本研究は順調に進展していると判断した。
アディポネクチンが酸化LDLに結合し、酸化LDL作用を抑制することがわかってきた。平成29年度は、逆に、酸化LDLがアディポネクチンの作用に対してどのように働くのかという点に着目し、アディポネクチン受容体を介したアディポネクチン作用への酸化LDLの影響について培養細胞を用いて解析する。また、アディポネクチンと変性LDLが血液中で実際に相互作用していることを血漿を用いて解析する。以上の実験により得られた結果を取りまとめ、成果発表を行う。
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