研究課題/領域番号 |
16K19195
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
西岡 光昭 山口大学, 医学部附属病院, 臨床検査技師 (70738963)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | TROY / LGR5 / デジタルPCR |
研究実績の概要 |
本研究者は大腸癌の臨床検体106検体からFz7・Wnt11・LGR5・TROYと大腸癌との関連性をリアルタイムPCR法やウエスタンブロット法を用いて明らかにしている。本年度は新たな遺伝子解析ツールとしてデジタルPCR(QX100TM Droplet DigitalTM PCR System:Bio Rad社)を使用し、これまで低発現のため定量が困難であったRspo2・ZNRF3・RNF43のWnt経路関連の低発現遺伝子の発現量を測定するため、最初にこれらの遺伝子を検出できる市販の標識プローブを用いて、条件設定を含めた予備実験を行った。予備実験にはDLD-1、RKO、HT116の3種類の大腸癌培養細胞株のcDNAを用いて検出感度やサンプリング量、PCR条件等の設定を行った。予備実験で各遺伝子の条件を設定した後に、LGR5・TROY・Rspo2・ZNRF3・RNF43の5つの分子に関して臨床検体のcDNAからデジタルPCRにて測定した。以前リアルタイムPCRで測定した値と今回のデジタルPCRの値を比較し、デジタルPCRが感度で優れていることを確認した。また、現在持っている臨床検体106検体に加え、新たに80例ほどの大腸癌凍結標本を追加することが可能となり、DNAとRNA(microRNAも含む)を抽出し、RNAに関しては逆転写反応により安定したcDNAを作成し、リアルタイムPCR測定とデジタルPCR測定の準備をした。この80例に関してはまだ測定途中であり、今後測定完了次第、全部で186例の測定結果から統計解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた大腸癌の臨床検体106検体でデジタルPCRによる測定を行ったが、新たに80例ほど追加となった。追加された80例はDNA・RNAの抽出から行うこととなり、当初より遅れを取った。しかしながら、186例で解析することが可能となり、より厳密に大腸癌との関連性のある分子を特定できると期待している。また、LGR5・TROY・Rspo2・ZNRF3・RNF43だけでなく他の分子においても大腸癌との関連性を持つことが期待でき、その分子に関しても現在デジタルPCRで測定中である。このように、本来の目的である低発現遺伝子の大腸癌の新規腫瘍マーカーの確立に向けて順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は臨床検体186例からLGR5・TROY・Rspo2・ZNRF3・RNF43から予後や生死に関するカットオフ値を設定するための解析を行い、大腸癌の新規腫瘍マーカーの候補を絞る。絞ったのちに、培養細胞を用いたin vitro実験を行う予定であるが、絞れない場合は、デジタルPCRにていくつかの候補分子を測定していき、大腸癌の新規腫瘍マーカーの候補分子を特定しようと考えている。それでも絞り切れない場合は候補分子を組合せることにより、大腸癌の新規腫瘍マーカー群として検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画は順調に進んでいたが、現在保有していた臨床検体106例に加え、新たに80例ほど追加することができたために、その検体のDNA・RNA抽出や予後調査、またmRNA定量測定に着手することとなった。そのため、抽出や調査・測定にかかる経費を先に捻出したことにより、当初予定した実験(培養細胞を用いたin vitro実験)の試薬・物品の購入金額よりも経費は少なくなったため、次年度使用となった。
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次年度使用額の使用計画 |
当初予定していた実験(培養細胞を用いたin vitro実験)の試薬・物品は購入予定であり、準備でき次第特定遺伝子の過剰発現細胞を用いたin vitro実験を実行する。この実験試薬・物品を購入することにより次年度に繰越した額が消費される予定である。
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