国内において、がん患者の死亡は年々増加し30万人を超えている。手術、化学療法、放射線療法のみでは不十分であり、がん免疫療法への期待が大きい。本研究では、がん免疫療法の主体である「樹状細胞を用いた免疫療法」に焦点を置き、新規臨床法の開発を目指している。樹状細胞を用いた免疫療法の効果はミトコンドリア機能に依存しており、その臨床はいまだに困難である。そこで本研究は樹状細胞のミトコンドリア機能の解析に重点を置き、「臨床への応用を目的とした樹状細胞のミトコンドリア活性測定法の開発」を目標とする。その開発により樹状細胞を用いた免疫療法の治療効果予測や治療適応の検討につながると考えた。 申請者が独自に作成したp32欠損樹状細胞(ミトコンドリア機能不全)は、ミトコンドリア呼吸障害や乳酸の蓄積など典型的なミトコンドリアの機能障害を認めた。さらに網羅的な代謝産物の測定をして、クエン酸が重要な代謝産物の一つであることを明らかにした。 さらに、申請者らはミトコンドリア機能を阻害する薬剤をスクリーニングして、ミトコンドリアタンパク質を合成する機能が大腸菌由来のLPSに対するインターロイキン6の産生に影響を与えていることを見出した。ミトコンドリアタンパク質の合成を制御する分子の一つであるp32という遺伝子の部分欠失マウスを樹立した。敗血症モデルではこのp32という遺伝子がインターロイキン6の量と予後に影響を与えていることを見出しました。さらに、線維芽細胞やマクロファージなど細胞を用いて、過剰に産生されるインターロイキン6はATF4という分子が核に移行することより起こるメカニズムを明らかにした。これらの内容をCell誌とLancet誌が共同でサポートする新規オープンアクセス誌EBioMedicineに2017年5月11日(米国時間)公開した。同内容は、多くの新聞に掲載された。
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