研究課題
本研究の目的はstage Ⅰ、の大腸癌において血漿から採取したcirculating tumor DNA (ctDNA)を用いたtargeted sequenceにより変異遺伝子を検出することで、既存の腫瘍マーカー、癌再発診断法よりも早期に癌再発を診断可能かどうか検証することである。本年度の研究計画に基づき、原発巣と転移巣に共通し、なおかつ両者において腫瘍細胞のほとんどの細胞に存在する遺伝子変異(clonal mutation)をtargeted sequenceによりctDNAから検出し、既存の診断方法と比較し、有用性を検討した。再発をきたしたstage Ⅰ+Ⅱの大腸癌10症例から採取した血漿サンプル77検体からctDNAを採取し、Agilent社のSureSelect XT カスタムキャプチャライブリを用いてtargeted sequenceを行い、スーパーコンピュターを用いた解析を行った。解析は東京大学ヒトゲノムセンターで開発したパイプライン、barcode解析を行い、遺伝子変異の同定し、経時的なアレル頻度の変化を検証した。
2: おおむね順調に進展している
再発をきたしたstage Ⅰ+Ⅱの大腸癌10症例から採取した血漿サンプル77検体から、Qiagen社のQIAamp Circulating Nucletic Acid Kitを用いてctDNAを採取した。その結果、採取できたctDNA量は3ng以上の検体が13検体、1~3ngの検体が51検体、1ng以下の検体が13検体であった。採取したctDNAをまずKapa Biosystems社のKAPA Library Amplification Kitsを用いてDNAの増幅を行い、10症例において原発巣と転移巣に共通するclonal mutation450個の遺伝子候補に対して作製したAgilent社のSureSelect XT カスタムキャプチャライブリを用いてtargeted sequenceを行った。スーパーコンピュターを用いて解析を行ったところ、10症例中6症例においてctDNAから遺伝子変異を検出することが可能であった。検出可能であった6症例を検討したところ、いずれの症例においても既存の再発診断方法よりも同等、もしくは早期に再発の診断が可能であった。
平成29年度においては現在の解析結果をさらに詳細に検討し、clonal mutationのなかでもどのような遺伝子変異が血中で検出可能であったか、その特徴を明らかにするために、スーパーコンピュターを用いてsignature解析やtargeted sequneceのbamファイルの可視化などを行う予定である。また平成29年度の研究計画に基づき、内視鏡的切除症例の検体を用いて腫瘍細胞の存在診断を行うために、大腸癌に対して内視鏡による切除を行い、その後の病理組織診断によって追加切除が必要となった症例を対象に、血漿からctDNAを採取し、targeted sequenceを行い同様の腫瘍で解析をする予定である。
次年度の実験に使う予定。
次年度、実験消耗品に使用予定。
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